2015 Fiscal Year Research-status Report
知的障害者支援におけるサークル・オブ・フレンズの国際比較研究
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26380818
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Research Institution | Mimasaka University |
Principal Investigator |
渡辺 勧持 美作大学, 付置研究所, 研究員 (00090423)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
薬師寺 明子 美作大学, 生活科学部, 准教授 (10412230)
島田 博祐 明星大学, 教育学部, 教授 (40280812)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 知的障害 / サークル・オブ・フレンズ / ダイレクト・ペイメント / 脱施設化 / 地域生活援助 / 台湾 / 英国 / スウェーデン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究のテーマ、サークル・オブ・フレンズは、知的障害者が施設から地域社会に出て本人の意向を尊重するためのダイレクト・ペイメントを実施するときに、言語による表出が困難な本人の気持ちを日々のつきあいから理解し支援する人々(サークル・オブ・フレンズ)について、各国の現状や問題を検討するものである。今年度は、渡辺が英国で推進している民間団体Circle of Friends や政府の関係で推進を行っているIn-Controlを訪問調査する計画をたてていたが、年度当初、台湾において「障害者の権利に関する条約」(略称:障害者権利条約)(Convention on the Rights of Persons with Disabilities)についての国際会議(從CRPD檢視台灣身心障礙者居住權與生活品質 國際研討會)に講演者およびコメンテーターとして来てほしいという依頼が知的障害団体を中心とした組織から依頼が渡辺にあった。会議のテーマ「我要住在社區:獨立生活是我的権利」(地域社会で生活することは、私たちの権利です)が、科研費のサークル・オブ・フレンズの研究と直結するために出席した。会議では、国連の担当者(アメリカ人)、日本と同様に戦後収容施設を作りすでに施設を全廃したフィンランド、なお施設環境を改善しているオランダなどの講演者から知的障害者の地域生活支援に関わる多くの情報を得ることができた。英国への調査は、今年度経費の残額約30万円と来年度の経費をあわせて行う。カナダでの調査は、島田が大学の業務で多忙を極めたため来年度に持ち越した。薬師寺によるスウェーデンの調査は予定通り実施し、幅広い年代の人々から情報を聴取した。研究について専門的な動向と意見を聴取する予定であったエマーソン教授が早期引退したため、彼の推薦もあり、長く共同研究を続けているハットン教授と今後研究成果について討論を行う
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で述べたように、今年度は、台湾の知的障害関連団体による障害者権利条約批准に伴う国際会議が開催され、本研究のテーマと深く関連すること、外国からの出席者からの情報が得られることからサークル・オブ・フレンズの問題の基本的課題である脱施設化、地域社会生活支援、本人主体等の日本の現状について下記のように検討することができた。1.日本では知的障害者の脱施設化を施策として推進しているが、地域生活支援のシステム自体が障害者自立支援政策の障害支援区分に見られるように本人の声を聞く施策を重視せず、従来の行政主導的なな制度を偏重しており、人の資源:ソーシャルワーカーやグループホーム等の支援者、パーソナル・アシスタント、コンタクト・パーソンに対する育成、研修の施策が不十分である。このことがサークル・オブ・フレンズのような知的障害者に対して日常的な支援の中でその人の気持ち、意向、主張を重視する支援制度に至らない理由の一つとしてあげられる。2.OECD(経済協力開発機構)の報告にあるように現在でも、日本の精神障害者の入院率は先進国では依然として高く、また、対GDPに対する障害者への予算も依然として低い。これらの地域社会生活参加に対する政治、経済的な消極的な対応が知的障害者を入所施設に留めたり、地域社会の住居(グループホーム)の定員数を10人までとするなど、海外では考えられないような反地域生活支援を展開する施策をとらせている。このような政策が一般の人々の障害者に対する態度を旧態依然の状態に留め、制度中心の施策をはびこらせていると考えられる。そのような日本の知的障害者施策の現状と比較すると、本研究のサークル・オブ・フレンズの制度は夢のような状態に思われるが、この面での日本の閉塞的な状況を打破する意味でも今後の先進国のダイレクト・ペイメントの調査が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
英国への調査に関しては、研究代表者渡辺が、今年度、国際学会での講演等のために実施できなかった昨年の課題:1.英国、Circles Network の事務局長Neville 氏をWarwickshire に訪問し、Networkの英国各地のサークル・オブ・フレンズを訪問し、サークルの障害者本人および参加者に対して、サークル結成、および参加の動機、継続している理由や動機づけ、知人等地域社会の人々とのつながり、広まりについて、コーディネーターに対してその役割、研修、現在の問題についての聞き取りを行う。2.バーミンガムでダイレクト・ペイメントを推進している政府の関連団体In-Control においても同様の聞き取りを行う。3.できれば、本人の声をサービスにつなげる活動をしているthe National Brokerage Networkにも訪問調査、を行いたい。また、分担研究者:島田は大学の業務多忙のために行えなかった課題:平成23~平成25 年度 「知的障害者のダイレクト・ペイ メントに関する国際比較研究」でカナダ、知的障害者の親、本人の会であるCommunity Living British Columbia(CLBC)と協力を得て、サークル・オブ・フレンズに焦点をあてて調査を行う。また、2年間に明らかにされた3カ国の調査結果について、研究協力者ハットン教授と研究協議を行い、結果の妥当性、今後の方向性について、国際的な視野から討議を行う。
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Causes of Carryover |
研究実績の概要で述べたように、本年度、予定していた英国への調査は研究代表者、渡辺が台湾での障害者権利条約批准に関わる国際会議に招聘されたため、時間的にも経費の面でも困難になり、来年度実施することに変更した。また、研究分担者島田についても、大学での業務が多忙を極めたため無理をせずに、調査を次年度に繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究代表者渡辺については今年度すでに使用した額があり、その残額と次年度の経費と合算して、英国調査に使用する。研究分担者島田については今年度の使用はなく、次年度にそのまま持ち越し当初の計画通り調査を実施する。
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Research Products
(8 results)