2015 Fiscal Year Research-status Report
社会的認知能力の個人差と視線・脳皮質活動との関連性に関する研究
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26380840
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
若林 明雄 千葉大学, 文学部, 教授 (30175062)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 心の理論 / 社会的認知 / 視線方向 / 視点取り |
Outline of Annual Research Achievements |
Empathizing Quotient/Systemizing Quotient の結果をもとに,3つの認知スタイルに対応する実験参加者を抽出し,社会的認知課題として,Eye Test と動画を使用した心の理論能力検査(MPMR),視点取り(Perspective taking)課題として,視点の主体が Agentive なものと Non-agentive なものの2種類(計4課題)を使用し,実験参加者の課題遂行中の視線の動きを Eye Tracker (Tobii X60)によって記録した.実験参加者は,3つの認知スタイルに男女各10名ずつの計60名であった.認知スタイル(3:type-E, type-S, type-B), 性別(2),課題(4)の3要因を独立変数とし,分散分析を行った結果,3つの要因のすべてに主効果が見られるとともに,各要因間に交互作用が見られた.具体的には,1) 社会的認知課題の MPMR(動画)課題では,女性の方が刺激中の人物の顔に視線を向ける時間が長く,頻度が高い,2) 同じく,社会的認知課題の MPMR(動画)課題では,男女ともに認知スタイルの type-S に該当する人が,他の2つのスタイルの人に比べ,刺激中の人物の顔に視線を向ける時間,頻度が少ない.3) 視点取り課題のうち,Agentive 主体の課題では,女性の方が刺激中のAgentの顔に視線を向ける時間が長く,頻度が高い,4) 視点取り課題のうち,Agentive 主体の課題では,type-E に該当する人が他の2つのタイプの人に比べて刺激中のAgentの顔に視線を向ける時間が長く,頻度が高い,5) 視点取り課題のうち,Non-agentive 主体の課題では,全体として反対の傾向を示す.以上の結果から,社会的認知処理時の視線は,性や認知スタイルによって異なることが示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画の平成27年度分の実施計画については,実験および結果の分析などについては,おおむね完了しており,ほぼ順調に進展していると見なすことができる. ただし,実験参加者の都合もあり,実験の完了後の結果の分析が,予定の時期より遅れたため,当初予定していた年度内の国際学会等での研究成果報告を平成28年度に見送ることになった.平成28年度は,早い段階で27年度分の研究成果について報告するとともに,そこでの意見などを参考にして,最終年度の研究を実施していく予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
研究で使用している4つの課題については,一定の妥当性・信頼性が確認されており,最終年度の使用を継続する予定であるが,合わせて,表情判断課題や eye-gaze Simon effect 課題なども取り入れることによって,より包括的な社会的認知処理過程における視線の動きの個人差について,検討することを考えている. また,視線の動きについては,これまで水平方向の移動を中心に分析してきたが,より3次元的な(奥行き方向も加えた)動きについても検討することを考えている.
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Causes of Carryover |
平成27年度中に予定していた海外での国際会議での研究成果発表が,実験の進行の遅れ(主として実験参加者の都合などによる)によって年度内に間に合わず,国際学会等への参加・発表をすることができなかったために,海外出張のための旅費,滞在費等が支出されず,結果的に年度内の予算額のかなりの額が平成28年度へ繰り越しされることになった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度予算の繰り越し分については,平成28年度の前期に,平成27年度に行った研究成果を中心として海外の国際学会等での研究発表を行うための旅費,滞在費等の必要経費として使用する予定である.
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