2016 Fiscal Year Research-status Report
セルフスティグマ低減に対する日常臨床場面における認知行動療法の有用性の検討
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26380971
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Research Institution | Kyoto Women's University |
Principal Investigator |
下津 咲絵 京都女子大学, 発達教育学部, 准教授 (90392448)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | セルフスティグマ / うつ病 / 精神疾患 / 認知行動療法 / 認知的スキーマ |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)セルフスティグマに関する実証的研究のレビューを行い,国内雑誌において展望論文として発表した。そのなかで,セルフスティグマは広範な精神疾患患者にとって重大な課題であることを提言した。 (2)<目的>(研究1)日常臨床で実施されている集団認知行動療法の抑うつ患者のセルフスティグマに対する効果を検討することを目的とする <方法>対象:精神科クリニックにおいて実施された集団認知行動療法プログラムに参加した外来患者54名(男性35名,女性19名)。 方法:プログラム開始前(事前)と終了後(事後)に以下のアセスメントを実施した。①セルフスティグマ(DDS)12項目,②抑うつ症状(BDI-Ⅱ)21項目,③認知的スキーマ(DAS-24-J: 非機能的態度尺度)24項目,④自尊感情尺度10項目。 <結果>プログラム前後において,セルフスティグマ得点の有意な減少が示された。加えて,認知的スキーマの改善,抑うつ症状および自尊感情の回復についても,プログラム前後において統計的に有意な望ましい方向への変化が示された。さらに,セルフスティグマ低減の要因を検討するため,認知的スキーマの測定に用いられたDAS-24-Jの3下位尺度のプログラム前後での変化量を独立変数,セルフスティグマ得点の変化量を従属変数とした重回帰分析を行った結果,下位因子『達成動機』のみが有意な影響力を持つことが示された。 <考察>日常臨床で実施されている集団認知行動療法の抑うつ患者のセルフスティグマ低減に対する効果が示された。また,セルフスティグマ減少を目指す認知的アプローチを実施する際には,「成功者にならなければ,私の人生は無駄である」,「少しの失敗でも,完全な失敗と同じくらいひどいことだ」といった項目で構成される『達成動機』に関する認知的スキーマの変容が重要である可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
抑うつ症状のある患者群を対象とした認知行動療法プログラムによるセルフスティグマ低減の効果については,対象者が順次蓄積されており,今後成果についてまとめ,発表を行っていく段階にある(研究1)。セルフスティグマにより焦点を当てたセッションの開発が遅れている(研究2)。
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Strategy for Future Research Activity |
現在得られているデータを整理,分析をすすめ,その成果を順次発表していく。特に,これまで得られた量的データ,質的データを総合的に整理し,セルフスティグマに焦点を当てて介入する際の具体的な手法について提言していくことが今後の課題である。
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Causes of Carryover |
人件費・謝金を要する取り組みを本年度実施しなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
来年度は取りまとめの年度であり,これまでの余剰分についても執行していく予定である。特に,本年度使用がなかった人件費・謝金をプログラム実施者および対象者に対して使用し,また,成果の発表のための出張費が多くなる予定である。
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Research Products
(3 results)