2014 Fiscal Year Research-status Report
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26380980
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
槙 洋一 北海道大学, 文学研究科, 専門研究員 (90582718)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 自伝的記憶 / 機能 / 世代差 |
Outline of Annual Research Achievements |
自分が経験した出来事に関する記憶は自伝的記憶という。自伝的記憶には,自己を確認する(自己機能),会話するときの話題を提供する(社会機能),自分を目標に対して動機づける(方向づけ機能)という3つの機能があり(Pillemer,1998),測定尺度として,Thinking About Life Experience Scale(TALE) (Bluck et al.,2005)が提唱されている。筆者らは海外の研究者と共同研究し,2013から2014年にかけて,約450人の大学生を対象にTALEの日本語版を実施し,日本とアメリカで自伝的記憶の文化差がみられるかを検討した(Maki,Kawasaki,Demiray & Janssen,2015)。その結果,アメリカ人の方が日本人よりも自己機能,社会機能を多く使用することが示された。しかし,大学生を対象にしたために,それより上の世代ではどのような傾向があるのかが不明であった。 本年度は,筆者らの先行研究をもとに,自伝的記憶の機能を測定するためにTALEの日本語版を実施し,自伝的記憶の機能の世代差を検討した。 本調査実施前に2014年8月に予備調査を実施した。20代から50代の社会人160人を対象に,自伝的記憶の機能を測定するための尺度を実施し,世代差を検討した。その結果,20代群よりも50代群のほうが社会機能,方向づけ機能を使う頻度が高い傾向がみられた(2014年11月北海道心理学会発表)。 本調査として,2015年1月にインターネット上で30代から60代の600名を対象に,自伝的記憶の機能の世代差をみるための調査を実施した。その結果,20代群よりも50代群,60代群のほうが社会機能,方向づけ機能を使う頻度が高い傾向がみられた。この結果は2015年度中に学会発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書では,「(1) 先行研究をもとに,自伝的記憶の機能を測定するための日本語による尺度を作成する。さらに,回想機能尺度の日本語版(瀧川,2010)との相関を測り,因子間にどのような関係があるのかを検討する」,「(2) 若年層,成人層,高齢層に対して,手がかり語法による自伝的記憶の想起を求め,ライフスパンにおける分布,想起内容,機能の関連を世代間の比較を通して検討する」,「(3) 若年層,成人層,高齢層に対して,鮮明に覚えている出来事を想起させることによって,ライフスパンにおける分布,想起内容,機能の関連を世代間の比較を通して検討する」,「(4)これらの結果をもとに,自伝的記憶のライフスパンにおける分布,想起内容,機能の関連に関する包括的な理論を提唱する」といった4点を研究の達成目標としていた。 本年度は,上記4点の研究の目標のうち,自伝的記憶の機能を測定する日本語版の尺度作成をし,先行研究結果を再確認できたことによって,目標(1)について達成できた。しかし,回想機能尺度との関連については,当該尺度の日本語版が投稿論文として公開されていなかったために調べられなかった。この点は今後の調査によって検討していく。また,30代から60代の自伝的記憶の機能に関する調査を実施し,世代差を見出したことで,目標(2)の一部を達成できた。ただし,自伝的記憶の分布や想起内容に関する世代差については調べることができなかった。 全体的にみると,今年度は3か年計画の目標の3割程度達成できた。なお,目標(1)(2)の未検討部分と目標(3)(4)については,今年度および来年度にかけて検討していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は,達成目標(2)「若年層,成人層,高齢層に対して,手がかり語法による自伝的記憶の想起を求め,ライフスパンにおける分布,想起内容,機能の関連を世代間の比較を通して検討する」について研究を進めていく。特に,自伝的記憶がライフスパンにおいてどのように分布しているのか,またどのような想起内容なのかについて重点的に調べていく。 今年度の研究計画は次のように進める予定である。4月から6月にかけて調査の準備,7月から8月にかけて予備調査の実施,9月から10月にかけて分析と予備調査の学会発表,11月に本調査の準備,12月に本調査の実施,1月から3月にかけて調査結果の分析,学会発表,論文の執筆である。 また,達成目標(1)「自伝的記憶の機能を測定するための日本語による尺度を作成し,回想機能尺度の日本語版(瀧川,2010)との相関を測り,因子間にどのような関係があるのかを検討する」のうち,未達成部分である回想機能尺度の日本語版との関連を調べていく。本尺度の作成者と今年5月にミーティングをする予定である。その話し合いで,今後どのように調査を進めていくのかについて計画していく。
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Causes of Carryover |
予定していた商品(コンピューターソフト)に購入すると今年度の予算をオーバーしてしまうため,次年度に繰り越しをした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度の予算とあわせて使用し,予定していた商品を購入する計画である。
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Research Products
(2 results)