2016 Fiscal Year Research-status Report
認知スタイルとグローバル処理対ローカル処理の関係:認知スタイルは変えられるか?
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26380989
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Research Institution | Kyoto Women's University |
Principal Investigator |
箱田 裕司 京都女子大学, 発達教育学部, 教授 (50117214)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 認知スタイル / Navon 課題 / グローバル / ローカル / ロッド・フレームテスト / 言語的遮蔽効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の成果は3つに大別できる。 一つ目は明順応下で行った、Navon課題のグローバル・ローカル処理課題がその後の認知スタイル課題(ロッド・フレームテスト:R-Fテスト)の成績にどのような影響を与えるか調べた研究である。この実験結果はグローバル処理課題はR-Fテストの成績にはなんら影響を及ぼさないが、ローカル処理後にはR-Fテストの成績を向上させること(物理的鉛直と心理的鉛直の誤差が小さくなること)が明らかとなった。この成果は国際心理学会2016で発表された。 二つ目は、刺激を言語化することによってその再認が低下する現象(言語遮蔽効果:VOSE)が、言語化だけでなく、処理モードの変更によっても生起するのでないかという仮説の検証実験である。匂い刺激を用いて、刺激呈示後にNavon課題のグローバル・ローカル処理課題を実施することによって検証したところ、予測どおり、グローバル処理課題を行うと、匂いの再認成績が向上するが、ローカル処理課題を行うと低下することが明らかになった。この成果は日本認知心理学会2017年大会で発表予定である。 三つ目は、グローバル・ローカル処理課題がR-Fテストの成績に及ぼす効果を暗順応条件下で行った研究である。その結果、暗順応条件下ではグローバル処理課題を実施するとR-Fテストの成績が低下し、ローカル処理課題を行うと成績が向上することが分かった。 これらの結果は、我々の情報処理モードはNavon課題の実施によってコントロールすることが可能であり、これによって従来は安定していることを暗黙の前提としていた、認知スタイルの成績に影響を与えることを示すものである。この成果は2018年日本心理学会大会で発表の予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者の発病とその治療のため時間を要したので、研究計画書に記した当初の予定の予定の一部が実施不可能となったが、基本的な部分はほぼ研究することができ、興味深い成果も得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の当初の計画の主要部分の遂行によって、グローバル・ローカル処理が安定した特性ではなくモードであることがほぼ明らかになった。しかも処理モードは従来安定した特性として考えられてきた、認知スタイル(「木を見て森を見ず」か、「森を見て木を水か」)の生起を左右すること、香りの再認成績まで左右することが明らかとなった。今後は、「木を見て森を見ず」の傾向を顕著に示す、ASDやADHDの認知特性がグローバル・ローカル処理訓練によって変更可能であるかどうかを検討する計画である。
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Causes of Carryover |
研究期間中に外科手術及び高度先進医療の治療を要する病気を発症したために、研究の遅滞を生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
1.前年度、グローバル・ローカル課題の実施が認知スタイル課題のロッド・フレームテストに影響を及ぼすことを発見できた。これに関連する変数をより詳しく検討すること。 2.前年度行うことができなかった研究(特にグローバル・ローカル処理課題がASDもしくはADHDの人々に及ぼす影響の研究)を実施することと、日常生活に見られる「木を見て森をみず」あるいは「森を見て木をみず」行動との関連を調べること。
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Research Products
(3 results)