2014 Fiscal Year Research-status Report
運動に対する感覚フィードバックの遅延への順応機構の解明
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26380998
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
菅野 禎盛 九州産業大学, 経営学部, 准教授 (90352103)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 国際情報交換 / オランダ / 多感覚知覚 / 視覚 / 聴覚 / 順応 / 時間知覚 / 感覚運動協調 |
Outline of Annual Research Achievements |
自発的な運動に伴う感覚フィードバックを人工的に遅らせると,当初感じられていた遅れが時間の経過とともにほぼ消失する。そして感覚フィードバックの遅れを取り去ると,驚くべきことに運動より前に感覚フィードバックが到来したかのように因果関係の知覚が逆転して感じられる(時間的再較正)。本研究では,被験者が容易に遂行でき信頼性の高いデータが短時間で得られる同期タッピング課題を主に用いて,感覚運動間の時間的再較正が身体の各部位や感覚モダリティにどの程度特化しているかを検討する。平成26年度はまず,時間的再較正のメカニズムが感覚モダリティ間でどの程度共通なのかというモダリティ特異性の問題について検討を加えた。異なる感覚モダリティのフィードバック(光か音)を異なる遅れで交互に呈示した場合に感覚モダリティー間でどのようなクロストークが生じるかを2つの行動実験によって検討し,視聴覚モダリティ間で大きなクロストーク(再較正の相殺)が生じることを明らかにした。この結果は,時間的再較正のメカニズムが感覚モダリティでかなり共通していることを示唆している。その一方で,聴覚フィードバックの遅れに対する時間的再較正の場合には聴覚モダリティに特有の順応も生じていることが示唆された。このことは,メカニズムの一部は感覚モダリティに特異的であることを示唆している。これらの結果をTilburg大学(オランダ)の共同研究者とともに論文にまとめ,国際学術雑誌に投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の当初の計画は,時間的再較正がどの程度感覚モダリティや身体部位に特異的であるのかの検証することであった。このうち,時間的な余裕があれば実施しようと計画していた左右の耳あるいは左右の視野への特異性を検証する実験は実施することができなかったものの,当該年度の目標であった感覚モダリティに対する特異性については2つの実験により検証することができ,論文にまとめることができた。この論文は現在国際学術雑誌に投稿中である。以上の進捗状況を考え,研究はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り,平成27年度は感覚運動間の時間的再較正が運動に関係したタイミングの変化(いつ動かしたか)によるものか,感覚に関係したタイミングの変化(いつ感覚フィードバックが到来したか)によるものであるのかを切り分けることを目標とする。この目標を実現するための実験として,時間的再較正に伴って感覚刺激に対する知覚潜時が変化しているのかを検証する実験や,運動に対する触覚フィードバックの寄与を推定する実験,などを予定している。このうち前者については同期タッピング課題と単純反応課題を併用する実験に既に着手している。後者については同期タッピング時の触覚フィードバックを限りなく除去した条件を設定する必要があるが,そのためには特殊なデバイスの考案が必要であるため,時間的な余裕があれば実施する計画である。必要であればデバイスの作成についてTilburg大学(オランダ)の共同研究者に支援を依頼することも計画している。
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Causes of Carryover |
発生した次年度使用額は,論文の公表のために計上していた「その他」に分類される予算と,実験参加者への謝礼として平成26年度に計上していた「人件費」に分類される予算に対応している。前者については,平成26年度中に論文を公表するにいたらなかったため出版のための費用が発生しなかった。後者については,自発的な志願者を実験に必要な人数だけ確保できたため謝礼の費用が発生しなかった。以上の理由から次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成26年度の研究成果をまとめた,現在投稿中の論文が受理された場合の公表のための費用として使用する予定である。
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Research Products
(3 results)