2015 Fiscal Year Research-status Report
ナラティブ・ラーニングを応用した高度教職能力の開発に関する臨床教育学的研究
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26381003
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
庄井 良信 北海道教育大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (00206260)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ナラティブ / 教師教育 / 高度教職能力 / フィンランド / 授業研究 / 臨床教育学 / 学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,昨年度に蒐集した内外の基礎データに基づいて理論的な基礎づけを行った.具体的には,フィンランドのオウルにおいてPentti Hakkarainen博士やMilda Bredikyte博士らとの共同研究で蓄積してきた参与観察のデータを整理し,フィンランドにおけるナラティブ・ラーニング(以下,NLGと略す)に関する諸文献の翻訳も進めた.その上で, NLGの教師教育カリキュラムにおける意義と可能性に関する第2次理論仮説を構築することができた. それと並行してNLGに関する国際的な共同研究の環境も整備した.具体的には,昨年度に構築したフィンランドのオウル大学教育学部及び大学院修士課程・博士課程との共同研究体制を整備し,現職教師教育カリキュラムにおけるNLGの教育的意義を考察する国際的な研究環境を整えた.また,リトアニアで展開されているNLGの実践研究に関するデータを共有する準備も整えた.国内では,NLGを志向した臨床教育学的な授業研究フィールドワークを,広島市立の公立学校の協力を得ながら4回実施することができた. これらの成果は,2015年9月20日に信州大学で開催された日本教師教育学会第25回研究大会課題研究において「リサーチベースの大学院教育デザイン:フィンランドの教師教育者の語り(ナラティブ)を参照枠として」というテーマで,2015年10月11日に岩手大学で開催された日本教育方法学会第61回大会課題において「研究擾乱のナラティブから高度実践構想力へ:教師への育ちを支える教育方法学の役割」というテーマで発表することができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度に整理したナラティブ・ラーニング(以下,NLGと略す)の基礎的研究データに基づく理論仮説を予定通り構築することができた.過去5年間の資料から,これからの国際的な共同研究の方向性を見据えることができた.教師教育の当事者へのインタビューデータ等については,本年度も,国内では,フィールドワークに協力していただいている公立学校の学校長への聴きとり調査を4回実施することができた. フィンランドにおけるNLGに関する文献の翻訳も順調に進み,最終的な出版準備の段階に到達できた.NLGに関する国際的な共同研究も,フィンランドとリトアニアで順調に進み,臨床教育学的な授業研究フィールドワークも4回実施し,NLGを参照枠とした教師教育カリキュラムを,本年度も構想することができた. 現職教師教育カリキュラムや,NLGに関する内外の研究文献・資料の蒐集・整理では,オウル大学との研究交流を拡充できた.これらの成果は,日本教師教育学会第25回研究大会課題研究における「リサーチベースの大学院教育デザイン:フィンランドの教師教育者の語り(ナラティブ)を参照枠として」というテーマや,日本教育方法学会第61回大会課題における「研究擾乱のナラティブから高度実践構想力へ:教師への育ちを支える教育方法学の役割」というテーマで発表できた.以上のことから,本研究は,概ね順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である本年度は,初年度に整理・編纂した基礎データ及び,2年目に構築した第2次理論仮説にもとついて,最終的な理論仮説を構築したい.具体的には,広島市立の公立学校の臨床教育学的な授業研究のプロセスに共同参画することで得られたデータに基づいて,ナラティブ・ラーニング(以下,NLGと略す)が,今日の現職教師教育カリキュラムの開発においていかなる教育的意義を持つのかを明らかにしたい.その過程で,フィンランド,リトアニア等と,国際的な共同研究体制を堅固なものとし,理論的・実践的な理論を探求・精査したい. この作業と並行して,フィンランドにおけるNLGに関する文献の翻訳を完遂し,その成果を公刊したい.NLGの教師教育カリキュラムにおける意義を明らかにし,オウル大学の研究フォーラムや,全国規模の学会等に投稿したい.それを実現するために,フィンランドのオウル大学教育学部・大学院(修士課程及び博士課程)への第2次現地調査を行い,リトアニア教育大学のNLGに関する現地調査も実施し,国際的な基準での理論構築を遂行したい.
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