2016 Fiscal Year Research-status Report
20世紀前半のドイツにおける幼児教育の制度化と家族に関する社会史的研究
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26381016
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
小玉 亮子 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 教授 (50221958)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 幼児教育 / 家族 / 母 / ドイツ / ヴィアマル期 / 社会史 / ジェンダー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ヴァイマル期を中心として20世紀前半のドイツにおいて、幼児教育と家族がどのように議論されたのか、雑誌や議事録等の歴史的資料から明らかにすることを目的としている。 2016年度の実績としては、その前年の2015年におこなった教育思想史学会の大会シンポジウムでの報告を、9月に、論文「教育における母なるものの呪縛 -ジェンダー視点に立つ歴史研究から」(『近代教育フォーラム』No.25 pp.129-138)として刊行した。ここでは、近代教育思想が展開してくる過程において「母なるもの」が繰り返し登場し、一方で母の賛美が行われながら、同時に、賛美されることによって、ますます女性の位置付けが家庭の内部に固定化されていくことを明らかにした。ここで、最も母を頻出して登場させ、女性を賛美し、さらに女性を女性固有の役割として拘束していく、議論の舞台となったのが幼児教育に他ならなかったことを明らかにすることができた。 さらに、2016年10月には、このような構造が現代においても引き続き見られることを、論文「ジェンダーと市民性―多様化するドイツ社会と家族」(北村友人編『グローバル時代の市民形成』岩波書店、pp.217-239、総ページ数276)にまとめて発表した。この論文は、現代ドイツにおける家族問題を分析したものであるが、この論文をまとめるに当たって、現代ドイツにおける家族と子供に関する諸規範は近代ドイツ教育思想に見られる規範の延長線上にあることを確認することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、2本の論文をまとめることができた。特に、前年度の学会発表をさらに進化させて、形に出来たことは成果であると言える。また学術書籍上での掲載論文として、現代ドイツの家族の問題について、特に、移民問題との関係で分析できたことは意義があることだと考えている。本研究で扱っている20世期前半は、二つの大戦のみならず移民問題においても、ドイツ民族=国民意識が重要な役割を演じた時代である。こう言った意識において家族が協力な意味を持つことを、近代及び現代において確認することができた。 加えて、5月の日本保育学会で、ドイツの家庭的保育に関するシンポジウムの話題提供者となったこと、また、9月にダブリン(アイルランド)で開催されたEECERAの大会(27th)において、日・英・独の家庭的保育に関する比較研究をポスター発表をしたことも研究を進める上で、ドイツにおける家庭規範を検討するために意義があったと考えている。 また、9月には、ベルリンの幼児教育に関する伝統的な教育機関であるペスタロッチ・フレーベルハウスにおいて、資料収集ができた。2017年度にはこれらをまとめていきたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年度は本研究のまとめの年にあたる。2017年6月には比較家族史学会で報告することが予定されている。ここで、これまで収集してきた資料をまとめて発表したいと考えている。さらに、これを論文にすることを計画している。 特に、2016年にベルリンのペスタロッチ・フレーベルハウスで収集してきた、幼児教育に関する雑誌や文書資料をもとに、幼児教育と家族に関わる、まとめを行っていきたいと考えている。
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Research Products
(3 results)