2015 Fiscal Year Research-status Report
ライフヒストリーアプローチによる教師の「熟練性」の研究-「二重の応答性」の発達-
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26381025
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
森脇 健夫 三重大学, 教育学部, 教授 (20174469)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 熟練性 / 二重の応答性 / 目標概念の多層性 / reflection in action |
Outline of Annual Research Achievements |
教師の「熟練性」の検討を主には、① 熟練日本語教師の「熟練性」の検討 ② 若手教師の思考と判断の研究 の二つの研究を中心に行ってきた。 ① 熟練日本語教師の「熟練性」の検討においては、授業において想定外の「出来事」が起きたときに、熟練教師が瞬間的にどのように思考し、判断するかを、3人の教師の事例研究をもとに行った。その結果、判断には、目標概念がかかわっており、多層的な目標概念を持っていることによって、目標概念を修正し、柔軟に「出来事」に対処することができることが明らかになった。また目標概念の多層化は、まさに教師経験によって実現されることがライフヒストリーインタビューによって明らかになった。熟達化とは、目標概念の多層化という観点からも示すことができると考える。 ②の研究は、まだ緒についたばかりである。授業において若手の教師が熟練教師のようにうまく「出来事」に対処できないのはなぜか、ということを授業の参加観察、および授業後のインタビューから明らかにしようという試みである。多少、困難を抱える若手教師の授業を対象に研究を行っている。想定外の「出来事」が起きたときに、思考・判断停止状態になってしまうのはなぜか。子どもの想定外の発言を受けて「スルー」をしてしまったときに何を考え、何を判断したのか、を丁寧に授業記録、インタビューを重ねながらデータを取っている。 この②の研究は、「二重の応答性」ができない状態の問題を明らかにすることに貢献すると考えている。応答ができないのはなぜなのか、を考えることによって応答性の要件を明らかにすることにつながると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
熟練性の研究を、日本語教師の熟練性の事例研究を通して行っていると同時に困難を抱える若手教師の対照的な事例研究を通して同時に行えている。前者については学会において報告、論文化している。後者についてはいまだ研究の端緒をひらいたところだが、これから継続的に事例を収集し蓄積していきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、事例研究を蓄積していく。「二重の応答性」に焦点化してそのかかわる要因を明らかにし、構造を明らかにする。目標概念の多層性まで行きついたが、その他の要因がどうかかわっているのかを明らかにしていきたい。
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Causes of Carryover |
科研費補助金を使用して行おうとした熟練教師の授業参観、およびライフヒストリーインタビューの計画を一部次年度にまわすことになったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
広島市における熟練教師の授業参観およびライフヒストリーインタビューを行う。また困難を抱える若手教師の継続的な授業参観と授業後のインタビューについても引き続き行う。
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Research Products
(3 results)