2016 Fiscal Year Research-status Report
明治期における小学校理科の誕生と「小学校及小学教場教則綱領」
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26381036
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
伊藤 稔明 愛知県立大学, 教育福祉学部, 教授 (40295572)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 理科 / 農学校 / 教育令 / 学校令 / 実業教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は、全国的な悉皆調査として明治前期の初等教育における実業教育に関して調査をすすめるとともに、とくに、福島県の郡山に設置されていた農学校に関して調査をして、その成果を論文にまとめた。 明治前期において、“国家富強”のため、工部省による近代工業導入とともに、士族授産という明治国家の重要課題を背景に、民部省や内務省を中心に勧農政策も推しすすめられていった。とくに、駒場農学校を設置した内務省は、西洋の近代農学導入による日本農業の近代化を企図した。このような全国的な流れを受けて、地方においても農事改良事業が取り組まれ始めた。こうしたなか、府県には農学校や農事講習所を設置して、農事改良に資する農業教育を開始するところも現れた。福島県でも明治13年に県立郡山農業学校が設置され、近代的な農業教育が開始された。明治13年における農学校設置は全国的にも早く、福島県は農業教育先進県であった。しかし、こうした先進的な農学校について、安積開拓との関連で紹介されたものがあるものの、本格的な学問的研究のメスはほとんど入っていない。この論文は、福島における明治前期の農学校に関する研究の端緒として、この農学校の開設から廃校までの経緯を明らかにすることを目的として執筆されたものである。 この当時、他県に存在していた農学校については、議会において常に廃止論にさらされていた。けれども、福島県会において農学校廃止論は皆無といえる。郡山農業学校設立の議論のときに、農学校不要論が若干出された以外に、その後の県会で廃校論は全く出されていない。これは、当時、短命に終わってしまった他県の農学校と比べてきわめて特徴的な状況である。しかし、開成山農学校は明治19年に突如として廃止されている。開成山農学校廃止の理由は現在も謎のまま残されている。開成山農学校は何故廃校に追いやられたのか。この謎の解明を今後の研究に期待したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
この基盤研究が始まって三年が経過した。全国的な調査もすすみ資料もかなり蓄積してきた。執筆した論文も、一年目は農学校通則に関わるもの、二年目は埼玉県小学校教則と小学校及小学教場教則綱領の関連を論じたもの、そして、三年目は福島県に設置された農学校に関するものとなった。こうした実績から、おおむね順調であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年度はこの基盤研究の最終年度となるため、小学校及小学教場教則綱領と理科誕生の関わりについて、本格的にメスを入れる研究をすすめたい。具体的には、再改正教育令期の文部省初等教育政策の変遷を、小学校条例取調委員たちの言説を中心に解き明かしていき、そのなかでも、とくに、手島精一と西村貞に着目して研究をすすめる。
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Causes of Carryover |
大学での職務が多忙で調査出張の時間を取ることができなかったのが、一番の要因である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
夏休みや春休みの期間を有効に利用して、計画的に予算を執行する。
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Research Products
(1 results)