2015 Fiscal Year Research-status Report
離島における専門職の力量形成・向上とその政策に関する研究
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26381091
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
木塚 雅貴 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20234304)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 専門職養成教育 / 教師教育 / 医師養成教育 / 離島 / 専門的力量の維持・向上・発展 / 国際研究者交流(イギリス) |
Outline of Annual Research Achievements |
東日本の離島調査(北海道(焼尻島・天売島)・山形県(飛島)・新潟県(粟島)・東京都(青ヶ島・御蔵島・父島・母島)の合計8島)を実施し、学校教員と診療所医師に対するアンケート調査(専門的力量の維持・形成・研修に関わる内容)、並びに学校長と診療所長への聞き取り調査(教育と医療の実情等)を行い、以下の重要な点が明らかとなった。 「離島の専門職が有する利点」として、「1クラス当たりの児童・生徒数及び1日当たりの患者数が少ないことから、研修に割く時間を確保しやすい環境がある」反面、「離島の専門職が直面する課題」として、「教師と医師の安定的な確保が難しい」、「一定の経験を積んだ教師と医師の赴任が難しい」、「研修の機会が物理的に制約されてしまう」、「多種多様な実践や事例を経験することが難しい」ことが見出された。 「政策的検討課題」として、「離島の教員と医師のために充分な研修予算を確保し、島外での研修を受けやすくすること」、「インターネットやテレビ会議システムを利用した研修を開発する」必要性が捉えられた。 研究成果は、2015年11月にThe 9th Annual Conference of the World Association of Lesson Studies(第9回世界授業研究学会)において、英語による口頭発表を行った。 また、前年度のイギリススコットランドの離島の医師の現職教育(研修)に関わる調査結果を踏まえ、2015年9月にスコットランドオークニー諸島の学校・診療所を訪問し、実情及び教員・医師の研修等に関する聞き取り調査を行い、日本の離島と類似の状況が捉えられた。その結果を踏まえ、同諸島教育省の関係者及び離島の医師と共同で、日本とイギリスの離島の教育と医療に関する調査研究を行うこととなり、2015年11月にグレイトブリテン・ササカワ財団による助成金を獲得し、2016年度に調査研究を相互に行うことになっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2015年度の計画は、「1.日本の離島の教育と医療全般に関わる文献調査を行い、その全体像を捉える。2.東日本に位置する離島の教師と医師の実態把握のためのアンケート調査(郵送)を行い、併せてアンケート用紙送付先の学校・診療所を訪れ、省察能力の育成を中心とする専門的力量の形成・向上の実情と課題について、教師(校長1名・教頭1名・教員2名。但し、父島は小・中学校が独立しているため、各校につき校長1名・教頭1名・教員2名)と医師(診療所長1名・医師2名)にインタヴュー調査を行う。3.東日本の離島調査の結果をまとめる。」であった。これらは、基本的に総て終了しており、特にアンケート調査については、調査先の学校の全教員から回答を得ることができた。また、本研究に密接に関わる新しい研究課題が捉えられ、イギリスの離島における専門職の専門的力量形成・維持・向上に関わる予備現地調査を行うこともでき、かつ新たな基礎研究資金も獲得できており、当初の計画以上の成果を上げていると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画に記載されている通り、2016年度は、西日本の離島における教師と医師の専門的力量形成の実情について、現地での聞き取り調査のために訪問し、アンケート調査とあわせて結果をまとめ、最終的には政策提言を行うことになるであろう。また、日本とイギリスの離島における専門職の専門的力量向上には同様の課題があることが明らかとなったため、本研究課題を新しいテーマに翻案して設定し、本格的な研究として2017年度以降に繋げて進めることが必要になっている。そのための基礎研究として獲得したグレイトブリテン・ササカワ財団の助成金を活用し、イギリスのスコットランドの離島を対象にした教師と医師の専門的力量向上の施策とCPDの実際を調査することが、当面重要な研究内容に位置づけられており、イギリスと共同で立ち上がった研究を遂行することになるであろう。
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Causes of Carryover |
物品費や旅費等においては、極めて少額の端数(今回は8円)が出ることは、消費税8%の関係上やむを得ないため、残金が8円生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年度の予算に加算して使用する。
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Research Products
(2 results)