2014 Fiscal Year Research-status Report
保育ユニバーサル化時代の3歳未満児ケア‐日独英3か国の家庭的保育事業の現状と課題
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26381096
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Research Institution | Seitoku University |
Principal Investigator |
椨 瑞希子 聖徳大学, 教職研究科, 教授 (30269360)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小玉 亮子 お茶の水女子大学, 人間文化創生科学研究科, 教授 (50221958)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ドイツの家庭的保育 / イギリスの家庭的保育 / 日本の家庭的保育 / 保育の質保証 / 監査(査察)制度 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度となるH26年度は、国際比較研究の実施体制を整え、ドイツ、イギリスの現状について情報収集と実地調査を行った。ドイツでは、バイエルン州立乳幼児研究所元上級研究員P.Oberheumer女史の紹介で、ドイツ青少年研究所(DJI)上級研究員G.Schoyerer氏に、またイギリスについては、ノーサンプトン大学名誉教授D.Hevey女史およびロンドン大学教育研究所上級講師L.Ang女史(2015年以降)から、参加の同意を得た。 ドイツのSchoyerer氏は、家庭的保育の専門家で、保護者の保育請求権拡大(2013年より、3歳以上から1歳以上に変更)に伴う家庭的保育の全独調査をとりまとめている。訪問時に、その成果と最新の調査データの紹介を受けた。 イギリスのHevey女史は、教育水準局(Ofsted)職員として、家庭的保育を含む保育監査制度の構築に携わり、その後保育者養成に転じた人物である。行政官としての経験と近年の動向について、情報提供を受けた。年度中に実施した調査と成果発表は、以下の通りである。 【実地調査】8‐9月:研究代表者・分担者。ミュンヘン市当局・同市内家庭的保育者・代替保育所。ノーサンプトン市内家庭的保育者。10月:Schoyerer氏招聘。東京都Ⅹ区の家庭的保育者・連携保育所・認定こども園。2015年2月:代表者。独バイエルン州ガーミッシュ郡家庭的保育指定事業者・家庭的保育者。ミュンヘン市各種保育施設。以上、訪問聞き取り。同市教育局主催保育大会出席。 【講演会等】10月25日:Schoyerer氏「ドイツの保育制度における質と専門性‐施設型と家庭的保育」於お茶の水女子大学。2015年1月11日:小玉亮子「家庭的保育の現状と課題:海外との比較検討から」於日本学術会議主催フォーラム。2月6日:椨瑞希子「日本のECCEと家庭的保育」於ドイツ青少年研究所。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画に掲げた3項目は以下のようであり、項目ごとにその進捗状況を記すことで、上記判断の理由とする。 (1)文献研究:家庭的保育を中心に、日独英3か国のECCE(乳幼児のケアと教育)全体像の把握・比較が可能となるよう、保育制度・家庭的保育の位置づけ・要請・研修に関し、実地調査時に公的基準等の提供を受け、また文献収集を行った。現状は流動的であり、引き続き収集を続ける必要がある。 (2)質問紙調査実施準備:実施可能な体制(フィールドと人脈を持つ有力な海外研究協力者との連携、家庭的保育研究者の国際ネットワークへの参加)はできたが、3か国の家庭的保育の制度的枠組みと実情が大きく異なることが明らかになりつつあり、その事実に照らしてみたときに、有意義な成果につながるような質問紙調査がありうるのか、あるとすればどのような調査項目であるのか、まだ検討が進んでいない。 (3)現地調査の遂行:独英の実地調査は、研究代表者が2度渡航することで、予定以上の進展をみた。英(ノーサンプトン市)、独(ミュンヘン市、ガーミッシュ郡)それぞれの家庭的保育者を訪問し、観察し、働き方について半構造化インタビューを実施した。すべて写真と録音記録として残した。研究者では、本研究課題に参加の同意を得た3名の海外研究協力者のほか、長年家庭的保育研究に携わってきた元ナショナル・チルドレンズ・ビュロー(全英子ども研究所)のS.Owen女史にインタビューを行うとともに、情報提供を受けた。また家庭的保育の研究者の国際ネットワークへの接続が承認され、広く情報交換を行う方策を確保した。 日本での合同調査については、予定を前倒しして、ドイツからSchoyerer氏を招聘して、都内Ⅹ区において家庭的保育等を訪問し、制度改革のさなかにある自治体の家庭的保育への取り組み例をつぶさに観察し、同区の指導担当職員より聞き取りを行った。
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Strategy for Future Research Activity |
2年次となるH27年度は、収集データ・文献の整理分析、海外実地調査、招聘合同調査と、中間的な成果発表を進める。 (1)収集データ・文献の整理:蓄積した音声記録の文字化、文献整理を行い、成果発表に向けて資料の整備を行う。海外研究協力者に向けて、日本のECCE改革情報、家庭的保育の制度や家庭的保育に関する研究の所在等について英文資料を作成し、随時提供する。 (2)海外研究協力者との日本調査:初年度に引き続き、招聘による共同研究の推進と研究交流、情報発信を進める。5月にイギリスよりHevey女史を招き、Ⅹ区その他において合同調査を実施する。またSchoyerer氏が本研究課題と関連するテーマで研究助成金を獲得し、1か月の予定で滞日保育調査を行う予定である。その支援を行いつつ、「3歳未満児のケア」のあり方についての議論を深めていく。 (3)成果発表:Hevey女史が滞在する期間中の5月16日(土)に、東京大学大学院教育学研究科「発達保育実践政策学センター準備委員会」と共催で、イギリスの保育監査制度整備の経験に学び、保育の質保証を考えるシンポジウムを開催する。記録は映像として保存し、文字化したものは所属機関の紀要に収める予定である。ウェブ上での早期公開も図る。また、9月のヨーロッパ保育者会議EECERAに参加し、研究交流を進める。 (4)3年次に予定している成果発表の取り組み、たとえば日独英3か国比較のシンポジウム開催、国内外の学会発表、学会紀要への投稿論文の準備を行う。
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Research Products
(4 results)