2015 Fiscal Year Research-status Report
保育ユニバーサル化時代の3歳未満児ケア‐日独英3か国の家庭的保育事業の現状と課題
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26381096
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Research Institution | Seitoku University |
Principal Investigator |
椨 瑞希子 聖徳大学, 教職研究科, 教授 (30269360)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小玉 亮子 お茶の水女子大学, 人間文化創成科学研究科, 教授 (50221958)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 家庭的保育 / 3歳未満児 / チャイルドケア / イギリス / ドイツ / 国際比較 |
Outline of Annual Research Achievements |
【学会発表】5月9日、10日に開催された日本保育学会において、日本の子ども・子育て新制度下の家庭的保育の位置を確認し、英独の家庭的保育を巡る動向を、両国の保育制度改革の枠組みと関連付けながら紹介した。その上で、3国における家庭的保育制度に関する予備的な比較分析を披露した。 【国際シンポジウムの開催】5月16日(土)、東京大学福武ラーニングシアターにおいて「乳幼児保育政策学シンポジウム」を開催した(東京大学秋田喜代美研究室との共催)。英国ノーサンプトン大学名誉教授Hevey博士を招へいし、基調講演を依頼した。「保育の質保証制度整備-イギリスOfsted 保育監査事業の経験-」と題した講演では、政府機関による全保育事業に対する一律の監査事業が、バラつきの激しかった英国の保育の平準化と質の底上げに功を奏した経験が語られ、質保証制度が依るべき理念が述べられた。それを受け、新制度下で拡大が見込まれる、多様な事業者による小規模保育事業(家庭的保育を含む)の質保証の方策を探った。 【実地調査】「家庭的保育全国連絡協議会」及び川崎、東京の家庭的保育者の保育観察及び聞き取りをHevey博士と共に行い、自治体ごとの取り組みの多様性を認識した。英国「ノーサンプトン・チャイルドマインダー協会」の聞き取り調査を実施。欧州幼児教育者会議(EECERA)バルセロナ大会にて独英研究者と情報交換。 【著作物】Hevey講演の記録及び解説を『聖徳大学児童学研究所紀要』に掲載した。 【その他】10月4日、Child Research Net主催のECEC研究会でイギリスの保育動向(家庭的保育を含む)を紹介し、公開記事の監修を行った。海外研究協力者として前年度招聘したドイツ人研究者Schoyerer博士を、2月に日本学術振興会採用「外国人特別研究員(欧米短期)」として聖徳大学に受入れ、本研究とのコラボレーションを進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.国際シンポジウムの開催、学会発表などの形での成果発表は、ほぼ予定通りに実施することができた。 2.実地調査による各種データの蓄積、文献調査等は順調に進んでいるが、得られた情報や知識内容の日本への紹介は遅れている。 3.質問紙を用いた独自の調査研究は、家庭的保育の保育制度上の位置づけの違いからくる調査項目の妥当性に対する懸念や、調査の実施体制が整わないことから、計画を断念した。しかし、質問紙調査で予定していた調査項目については、近年の英独先行研究に於いてすでに調査されているものが多くあり、その結果が複数公開されていることを確認しているので、その活用を図る。 4.質的研究に関しては、実地調査の音声記録データの蓄積が進んでおり、英・独の先行研究に照らした分析を行える条件が整いつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は以下の8項目を内容としており、最終年度となる次年度の目標は、未達成の⑤~⑧を形にしていくことである。 ①ECCE の改革動向と家庭的保育の制度的位置づけに関する資料・文献の収集及びレビュー ②3歳未満児のECCE 基準、特にケアに関する国基準と質保証の仕組みの翻訳紹介 ③家庭的保育の担当職の職能、資格、及び養成・研修をめぐる改革動向の把握 ④質の高い家庭的保育の実践例、質保証の在り方の実地調査及び紹介 ⑤3歳未満児のケアの在り方に関する研究者、家庭的保育者の見解の蓄積 ⑥3歳未満児ケアを巡る論議と論点の析出 ⑦3歳未満児ケアの心理社会的な理論基盤の解明 ⑧日本の3歳未満児保育の特質の把握 成果発信の手段として、前年度に引き続き英独より研究者を招いて国際シンポジウムを開催し公開する。平成28年度は、5月に開催された日本保育学会第69回大会において、ドイツ人研究者を交えた自主シンポジウムを開催する。さらに日独英3か国の研究者が一堂に会した形でのシンポジウムの開催構想がある。また国際幼児教育学会などの国内学会、欧州乳幼児者会議(EECERA)ダブリン大会において成果を還元する。EECERAの発表申し込みはすでに受理されている。 研究論文は、国内の学術雑誌ならびに国際学術誌に投稿する予定であるが、研究成果を世界に発信するルートは、海外研究協力者の招聘・合同調査によっても生まれる。研究代表者らは、日本語が読めない外国人招へい研究者に対して、家庭的保育及び日本の保育政策関連の情報を英語で提供してきている。彼らがそれを活用して合同調査で得た知見を、それぞれの国において、また日本へ向けて様々なルートで発信していくことが期待される。
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Causes of Carryover |
1.旅費の縮減:研究代表者、分担者が行った2回の海外調査は、他の資金による研究活動を兼ねており、それぞれに2週間前後の滞在期間を設定していた。したがって宿泊費及び日当は、本研究に関わって目的に即した調査活動が行えた日数についてのみ計上している。当該年度は、日本学術振興会採用の外国人特別研究員が研究代表者の下で研究に従事していたことや、所属学科における業務の関係で、本研究の目的を果たすうえで最適な時期に渡航できなかった。結果として本研究推進に従事できる日程が少なくなった。海外旅費は1日あたりの計上費用が大きいため、予定より少額になったことが最大の理由である。 2.物品費、食事を伴う会議費:予算に計上していたが、領収書等の不備のために申告していない。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
成果発表の一つとして、3か国より研究者を招へいした国際シンポジウムを開催する構想があったが、支払い決定を受けた科研費の範囲では、予算的に難しいものであった。平成27年度予算に差額が生じたことから、次年度使用額が大きくなったので、構想実現のために振り向けたい。
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Research Products
(6 results)