2016 Fiscal Year Research-status Report
保育ユニバーサル化時代の3歳未満児ケア‐日独英3か国の家庭的保育事業の現状と課題
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26381096
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Research Institution | Seitoku University |
Principal Investigator |
椨 瑞希子 聖徳大学, 教職研究科, 教授 (30269360)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小玉 亮子 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 教授 (50221958)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ドイツの家庭的保育 / イギリスの家庭的保育 / 日本の家庭的保育 / 保育の質保証 / 保育政策 / 国際比較 / 保育職の専門性 |
Outline of Annual Research Achievements |
【国際シンポジウム開催】5月に日本保育学会第68回大会(東京学芸大学)に於いて、ドイツ青少年研究所(DJI)子ども福祉部門国際部のBirgit Riedel女史を招へいして、自主シンポジウム「3歳未満児保育のユニバーサル化と質保証-ドイツの政策と課題-」を開催した。ドイツの保育拡充政策における家庭的保育の位置づけと現状に関する最新情報を参加者と共有し、「家庭的保育者の専門化を巡る論議の整理」と「家庭的保育の特長解明」という日独共通の課題を確認した。これらの課題は英国にも当てはまるので、蓄積したデータの分析に活かしていく。 【実地調査遂行】5月中旬にRiedel女史と研究代表者の椨とが、また5月末~6月初めにかけて来日したAng博士と椨の組み合わせで、東京都区内の家庭的保育の合同実地調査を行った。8月と3月には、椨がロンドンにてAng博士と家庭的保育者の訪問調査(観察と聞き取り:写真、録音、文字データの収集)を、また研究分担者の小玉は、8月にドイツの家族を巡る状況調査を行った。 【国際学会発表】欧州幼児教育学会(EECERA2016)において、椨・小玉の連名で家庭的保育の現状に関する日独英3カ国比較のポスター発表を行った。会場では、同じ領域に関心を持つ欧米研究者との研究交流を図り、男性家庭的保育者の直面する課題など、新たな分析視角を得た。韓国で開催されたセミナーにおいて、日本における国際比較研究の動向について発表する機会を得た際に、本研究の紹介を行った。 【著作物】論文1本、研究ノート1本、研究成果をその一部に含む図書収録論文2本を公刊した。 【その他】成果発表と新資料の分析時間の確保のため、研究期間の1年延長を申請し、承認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)本科研研究に携わった3か国の研究者が一堂に会して行うシンポジウムは、経費上困難であったため断念した。しかし、国際的な研究協力・情報交流網の構築と情報発信の成果として、平成27年度は日英間の、28年度は日独間の国際シンポジウムを開催することができた。28年度のシンポジウムでは、ドイツの3歳未満児保育政策と家庭的保育に関する最新情報を日本の関係者に発信するとともに、当該領域への関心を喚起することができた。日独英3か国の家庭的保育比較については、海外の学会においてポスター発表を行い、海外発信の少ない当該分野について、日本の状況を伝えることができた。 (2)収集データは、28年度は2本の論考にまとめ、所属大学の紀要に掲載した。学術雑誌への投稿は、平成29年度を予定している。 (3)海外から本科研プロジェクトに招へいした研究者による保育研究の成果が、Web論文として掲載(Child Research Net英語版:ベネッセ社の運営するWeb保育研究所ブログ)にされるなど、海外研究者とのコラボレーションとその成果発表のルートが開拓が進んだ。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)本研究課題の補助期間は平成26年~28年度の3か年であったが、これを1年延長して、新資料の分析と、国際的な研究連携を活かした学会発表を進める。期間延長の理由は、当初の研究期間中にイギリスの保育事情が変化したこと、並びに海外研究者と連携した学会発表構想が具体化したことにある。 イギリスでは、就労家庭の全3、4歳児の保育無償時間数を倍増(年間570時間から1140時間へ)する政策が、2017年秋に全面実施される。それに向けて家庭的保育を巡る状況が大きく変化し、3歳未満児の保育にも影響を及ぼしつつある。また、既に開始されている低所得層の2歳児に対する無償枠拡大についても、論考の蓄積が見られる。それを組み込んで最終報告をまとめる予定である。 (2)海外学会発表を行う。平成28年度に引き続き、平成29年度も欧州幼児教育学会(EECERA)での発表を予定しており、プロポーザルの1つはすでに採択されている。 (3)国際誌への投稿を行う。海外研究協力者との共著作業が進行中である。
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Causes of Carryover |
28年9月の韓国セミナーで同席したオーストラリア人研究者より、同国の教育学会で家庭的保育部会を設ける可能性が示唆された。11月には、イギリスの研究者と29年度の欧州幼児教育学会(EECERA2017)において自主シンポジウムを組織する計画が浮上した。そこで、その時点で未使用であった補助金の使用を凍結し、海外学会発表ための経費に充てることとした。次年度使用額が生じたのは、以上の理由による。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
欧州幼児教育学会における自主シンポジウムについては、平成29年4月現在、プロポーザルが採択され、8月末のボローニャ大会において成果発表を行う予定である。代表者と分担者2名分の渡航費の一部、及び参加費用として使用する予定である。オーストラリアに関しては現時点で連絡がないことから、分科会の設定がない可能性が高い。その場合は、これまで紀要論文等として発表した内容を含め、29年度の成果を合わせて、最終報告書を作成する費用に充てる。
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Research Products
(6 results)