2016 Fiscal Year Research-status Report
NPM型教育行政改革における市民の位置づけに関する研究
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26381160
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Research Institution | Osaka International University |
Principal Investigator |
中村 浩子 大阪国際大学, 国際教養学部, 准教授 (00441113)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | NPM / 学校運営 / ニュージーランド / チャーター・スクール |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、NPM(ニュー・パブリック・マネジメント)型教育行政改革における市民の位置づけについて、同改革を市場原理のもとに実施してきたニュージーランドと比較すべく、市場よりもむしろ市民社会による統治を理念化してきた国との比較を通じて、改革理念における市民の位置づけ、現実における市民と学校の関係性、またそれらの背景をなす教育や政治に関する思想的・制度的伝統について検討することである。 教育行政改革におけるNPMモデルの採用を条件づけた制度的・思想的背景について比較研究を行うためにH27年度に構築した分析枠組みをふまえ、平成28年度は、日本との比較検討及びニュージーランドにおける実態調査を行った。 日本との比較検討においては、日本で市民(保護者・住民)が運営参加する制度として設置が拡大している学校運営協議会(コミュニティ・スクール)の法制化を条件付けた理念及び思想的背景について整理・考察した。 ニュージーランドにおける実態調査については、先住民マオリの部族により創設・運営されている先住民学校を対象に現地調査を行った。また市民或いは民間により運営される学校として近年ニュージーランドで法制化されたパートナーシップ・スクール(アメリカにおけるチャーター・スクールにあたる)に着目し、多様に展開されている同スクールの事例調査を行うと同時に、同スクールが開校された学区内の公立学校訪問調査、教育省等聞き取り調査を実施し、NPM型改革を行ってきた公教育制度全体における制度の意味について検討しつつ、2つの学校種における市民の位置づけについて考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H27年度に構築した多国間比較のための分析枠組みを用い、日本の学校運営協議会制度(コミュニティ・スクール)の法制化を条件づけた理念及び思想的背景について検討し、同制度が目指すとするコミュニティの活性化については、その道筋を具体的に基礎づける思想や理論は不在もしくは捨象されていった可能性を指摘した上で、その空白を埋めるべく地域社会の活性化に向けた課題を理論的に整理した。 また市民或いは民間主導で創設・運営される学校として近年ニュージーランドで法制化されたパートナーシップ・スクール(いわゆるチャーター・スクール)について現地調査(学校訪問調査、学校長対象インタビュー調査、教育省等聞き取り調査)を行い、NPM型教育行政改革を行ってきた同国の公教育制度を取り巻く文脈において同制度はどのような理念のもとに位置づけられ、具体的にはどのような特徴を持つ学校が開設され、そこにはどのような多様性が見られ、またそれぞれいかに運営されているのか、それぞれの学校運営において市民はどのような役割を果たしているかについて検討した。
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Strategy for Future Research Activity |
H27年度に構築した多国間比較のための分析枠組みをもとに、H28年度に実施した日本とニュージーランドの比較検討及び調査結果をふまえ、またH27年度に進めたオランダの学校教育制度及びその制度的・思想的背景に関する文献調査の結果に基づき、ニュージーランドのパートナーシップ・スクールと比較可能なオランダ国内の学校種を対象に、学校訪問調査、学校長対象インタビュー調査、教育関連省庁及び教育研究機関聞き取り調査を行う。また多国間比較検討を行うにあたり、ニュージーランド及びオランダの教育研究機関に所属する研究者とのディスカッションを行う。
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Causes of Carryover |
H28年度に海外調査を実施した際、当初想定した額を大幅に下回る割引航空券を購入することができたため旅費をおさえることができた。またH28年度は実施できなかったオランダ現地調査をH29年度に実施するのに必要な額を確保した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
オランダ及びニュージーランド現地調査を実施する際に使用する予定である。
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Research Products
(2 results)