2015 Fiscal Year Research-status Report
イギリスのユニバーシティ・テクニカル・カレッジに関する比較教育学的研究
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26381162
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Research Institution | Nakamura Gakuen College |
Principal Investigator |
望田 研吾 中村学園大学, 教育学部, 教授 (70037050)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | イギリス / ユニバーシティ・テクニカル・カレッジ / 中等教育 / 技術教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度における研究は、以下のように実施した。 第1は、文献・資料の収集と分析である。ユニバーシティ・テクニカル・カレッジ(以下UTC)に関連する文書、資料、個別のUTCに関する資料等を主にインターネットにより収集し分析を行った。第2は、UTC等の訪問調査の実施である。平成27年度は2015年11月27日~12月7日の11日間及び2016年3月15日~23日の9日間の調査を実施した。11月調査においては2014年9月に設立されたUTC4校、UTCのスポンサーとなっている大学1校、技術教育推進団体1、UTCに批判的な継続教育カレッジ団体1を訪問した。3月調査においてはUTC4校、UTCのスポンサーとなっている大学1校を訪問した。今年度の調査において、明らかになった主な点は以下の通りである。 1.UTCをサポートしている技術教育推進団体のUTCの展望に関する見方は楽観的なものではなく、技術教育振興にとってUTCはシステム的対応ではなく、イギリスの技術教育システム全体の中にUTCが位置づけられる必要があるというものであった。また、UTCの発展にとってのネックは優秀な技術教育の教師不足であることも指摘された。 2.継続教育カレッジ団体へのUTC批判は、より直接的なものであり、既に多くの継続教育カレッジが「質の高い」技術教育を行っている中で、少数のUTCをさらに作る必要性は薄く、またイギリスのスキル不足にUTCが対処できるかどうかの証明はないというものであった。 3.UTCのスポンサーとなっている大学側のUTC関与の動機は、主に大学と地域社会とのリンクの強化と、自大学へのUTC出身者の入学を増やすというものであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書に記載された研究目的は以下の通りである。「本研究は、イギリスの保守党・自由民主党連立政権による中等学校制度改革の中核に位置するUTCを対象として、UTC設立の背景と経緯、UTC設立と運営における大学の関与の実態、UTCの目的と教育実践、UTCに対する教員組合、大学団体等の態度に焦点を当てつつ、UTCの実相を解明することを通じて、中等教育段階の技術教育に対する大学の関与が、イギリスにおいて長く軽視されてきた技術教育の地位向上にとってどのような有効性を持つのか、また、従来のイギリスの中等学校制度にどのようなインパクトを与えるのか等について、現地調査を中心とする方法によって、比較教育学的視点から明らかにすることを目的とする。」 この研究目的達成のための研究計画の第1は、関連文献・資料の収集であるが資料については主にインターネットにより収集した。第2に、研究計画の中心となる現地訪問調査については、平成27年度には計画通り2回(第3回、第4回)の訪問調査を実施した。UTCへの訪問調査は、第3回調査において4校、第4回調査において4校実施し、UTCの教育実態等についてのデータを前年度に継続して把握することができた。UTCのスポンサーとなっている大学については計2校を訪問し、さらにUTC推進団体とUTCに批判的な団体各1を訪問し、UTCに対する大学側の態度、UTC推進団体の態度、またUTCに批判的な団体の態度を明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度における研究計画については、以下のように実施を計画している。 1.前年度に引き続き、UTC関連の文献・資料を収集・分析する。 2.第5回訪問調査(2016年12月予定):UTC・大学等訪問調査。前年度に引き続き新たに設立されたUTC、UTCに関与している大学、さらにUTCをサポートしている企業等を訪問し、校長、関係者等に対してインタビューを行うとともに、関係資料を収集する。 3.3年間の研究成果に基づき総合的考察を行う。
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Causes of Carryover |
平成27年度第2回調査を3月中旬に実施したが、同調査の現地経費は会計処理上、平成27年度中には支出されなかったため、残額が持ち越されたものであるが、実質的には調査旅費として既に費消されている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記のように、27年度3月に実施した調査旅費に充当する。
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