2016 Fiscal Year Research-status Report
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26381210
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
蜂谷 昌之 広島大学, 教育学研究科, 准教授 (60510542)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松岡 敬興 山口大学, 教育学部, 准教授 (10510539)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 図画教育史 / 美術教育思想 / 教育実践史 / 図画作品 / 児童画 / 昭和戦後期 / 大正自由画教育 / 題材研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は前年度までの調査に引き続き、富山県高岡市の小学校に所蔵される卒業記念図画作品の分析をふまえた図画教育変遷に関する調査のほか、大正期における自由画運動の展開に関する調査を行った。 まず、図画教育に関する調査では、昭和20年代から30年代にかけて制作された約6,300点の図画作品を手掛かりに、一地方の学校における図画教育実践の検証を試みた。昭和戦後期の図画教育の状況をふまえ、この間に制作された作品のテーマや表現方法等を分析し、当時の図画教育実践の実態を考察した。調査の結果、この期間には主に静物画、風景画、人物画、考案画が制作され、期間の中頃から抽象画や木版画が新たな題材として加わったことが明らかとなった。表現方法には、自由に、大胆に表現する傾向が現れており、創造性や個性の伸長という戦後我が国の美術教育観を代表する考えがこの時期に形成され、その理念が新しい題材とともに教育実践に定着したことがうかがえた。 また、大正期における自由画教育の調査では、全国各地に広まった自由画教育の富山県における展開について把握するため、自由画教育初期に北陸地区において開催された自由画展である「世界児童自由画展覧会」に関する新聞報道を分析した。報道内容には自由画の募集案内や展覧会の報告記事、師範学校教員など教育関係者による自由画に対する見解、観覧者による感想、展覧会場の写真などが含まれており、今後、それらの分析を進め、北陸地方における自由画教育の動向について明らかにしていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、富山県高岡市の小学校に保管される卒業記念作品を手掛かりに調査を行っているが、平成28年度は昭和戦後期の昭和20年代から30年代に制作された作品を中心に関係資料等の調査をふまえ分析を行い、当時の図画教育の変容について検討を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の調査に続き、作品資料を中心に教育実践の変容に関する検証を進めていきたい。昭和中期から後期にかけての作品調査を進める予定であるが、明治、大正、昭和前期の資料分析もあわせて行い、作品資料から前世紀の教育実践の潮流を把握できるようにしたい。さらに、学校に保管される習字及び作文作品を横断的に分析し、表現教育に関する多面的な検討を進めたい。
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Causes of Carryover |
本研究は、富山県高岡市の小学校に所蔵される卒業記念作品を中心に調査を行っており、平成28年度は主に昭和戦後期の作品調査を進めるとともに大正期の新聞報道に関する調査を実施した。学校における実地調査においては作品資料の撮影や整理をはじめ、学校関係資料等の調査、関係者への聞き取り調査などを行っているが、平成28年度の調査では検討対象とした作品資料数が多く、その分析を優先して行ったため実地調査が限定的なものとなったが、研究としては概ね順調に進んでいる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
調査のための物品の購入に使用するほか、実地調査や研究にかかわる協力者との打ち合わせの旅費等に使用する予定である。
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Research Products
(2 results)