2015 Fiscal Year Research-status Report
数学教育における図式との相互作用による数学的思考の分析-認知と文化の視座から-
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26381211
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
影山 和也 広島大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (60432283)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 篤史 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (20273823)
岡崎 正和 岡山大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (40303193)
和田 信哉 鹿児島大学, 教育学部, 准教授 (60372471)
岩田 耕司 福岡教育大学, 教育学部, 准教授 (90437541)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 図式 / 記号論 / 身体化理論 / ネットワーキング |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は,図式についての概念整理を行うことを目的とした。本研究は,数学的思考は図式への働きかけによって起こると見なしており,その図式の持つ両義性(リアルタイムの運動を記述したもの,および歴史的に継承されてきた文化的なもの)に着目することで,図式をともなう数学的思考の実相に迫ることができると考えている。それゆえ,概念整理にあたっての視座として,両義性を反映させるために身体化理論,C.パースによる記号論を据えつつ,理論相互の関連づけを図るためにネットワーキングの方法論を採用した。 図式とは,広い意味で紙面やスクリーン上にかきとめられたものである。ただし,学校数学のなかでは,子どもによるそれへの働きかけによって,当の子ども自身による思考を促すものでなければならない。それゆえ,同じ図式であっても子どもによっては多様な意味づけをもたらすかもしれないし,ただの図にとどまるかもしれない。記号論的には,図式には構成上の規則があり,それは数学科教科書などにみられる図式も同様である。それは同時に使用上の規則もともなっており,図式を扱うことができない子どもは,実のところ暗黙であるこれらの規則に気がつかない状態にある。 図式に対して,なにか運動のような動きをみることは図を図式とするきっかけであり得る。身体化理論ではその動きはパターン化されたジェスチャーに支えられ,記号論的には図式の一連の構成と操作の過程の最初の段階にあたる。双方の理論からの結論として,記号論的には,数学的思考の大部分は図式の構成と変容である,つまりそれは記号によって方向付けられ,その過程や所産である知識や概念も記号化されていると捉えられる。その一方で,身体化理論の視座では,数学的思考の大部分は図式化の過程でもある,つまり数学的思考は身体化されており,身体経験が認識対象や思考方法を構造化しているといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概念整理を複数の視座から行うという当初目的を概ね果たすことが出来た。理論的考察を補強するための事例の収集にまだ乏しい面がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の方針として,次の3点がある。 (1)図式を伴う数学的思考の事例を豊かにすること (2)数学史のなかでの図式の発展をみることで,数学的思考の分析枠組みに時間軸を取り込むこと (3)その分析枠組みを用いた実態調査によって,生徒の数学的思考を多角的に特徴づけること
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Causes of Carryover |
計画段階で想定していた国際学会での成果発表を,研究の進捗状況に照らして見送ったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は,ドイツとハンガリーにて行われる国際学会で成果発表をする計画である。その他,オランダでの国際学会での情報収集や,国内学会での成果発表に係る諸費として使用する計画である。
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Research Products
(5 results)