2015 Fiscal Year Research-status Report
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26381241
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Research Institution | Kibi International University |
Principal Investigator |
前嶋 英輝 吉備国際大学, アニメーション文化学部, 准教授 (50291878)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 環境による保育 / 粘土場 / 生態造形教育学 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究の目的は、幼児造形教育を構成する「ひと」「こと」「もの」について、環境設計と教育方法を生態造形教育学として確立することである。3年にわたる研究の2年目は、研究の中間的整理を行い、必要な実践データの収集に努めた。中間発表として3つの学会への発表を行うことで、多くの示唆と新たな研究協力を得ることができた。 引き続き協力園である高梁中央保育園(私立:岡山県高梁市)にて、年間にわたり造形遊びの実践研究を行った。デジタルカメラの精細な画像を保存して、最終年度に協力園等に研究報告および広報を行うための資料作成を行うことができた。また新たに陽だまりの丘保育園(東京都中野区)などの先進園への視察を行い、保育記録や週案の記録方法、保護者への提示方法などについて詳細な検討ができた。 本年度の成果としては、軒先粘土場の実践的な整備と室内外での粘土遊びの比較研究、発泡スチロールブロックなど様々な素材による0歳から5歳児クラスでの造形遊びの移り変わりに関するデータ収集が挙げられる。高梁市立高梁幼稚園との比較研究も継続できている。また「環境が行動を引き出す」というアフォーダンス理論(J.Gibson)をもとに、初めて生態教育学の視点から日本保育学会(H28.5:東京)にて発表を行うことができた。 8月に日本美術教育学会(静岡)、11月に日本乳幼児教育学会(東京)にて発表を行った。2月に新宿せいが保育園を訪問し、環境による保育に関する実践的な実例と方法論について丁寧な説明を受けることができた。継続して研究しているイタリアのレッジョ・エミリア市の保育について、ペダゴジスタ(教育学者Paola Cavazzoni)から解説頂いた内容を、2月の研修会(まちの保育園主催:東京)にて深めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27度に使用する予定であった研究費は予定額を100%使用して、機材を含め研究への準備や対応が十分にできた。また予定していた研究計画を推進することができ、先進園視察や学会発表での情報交換、論文発表も充実した内容であった。 具体的な理由としては、粘土200kgを使用した園庭での粘土遊びの実践を、デジタルカメラ等で記録・分析し、生態教育学的な視点で幼児の遊びを環境から眺める方法を示すことができた。この内容は、日本保育学会(H28.5.7)にて口頭発表し、有意義な意見交換ができた。また0歳から5歳クラスの子ども達の遊び環境を必要に応じて構成するための協力園での保育者研修会を、年間を通じて行うことができた。 交付申請書の研究実施計画に示した内容である①造形教育プログラム研究、②主体的な学びの場の研究、③造形遊び環境の研究、これらについておおむね順調に進展した。特に「場の保育」としての環境による遊びの実践は順調に進んでいる。また新規採用された保育園職員による粘土場の運営が可能となり、自立的な環境構成が実を結びつつある。一方で、保育所、幼稚園、学童保育、盲学校、総合教育センター(岡山県)、大学(鹿児島大学、高知大学)などから講演や研究協力の依頼があり研究実施計画を上回る進展も見られた。 また園内研修に芸術士として関わり、造形環境改善のための研修を行うことができた。しかし、協力園の保育士と情報交換しながら、造形遊びの環境について検討を行った結果、造形遊びが単独の方法論として確立できるわけではなく、園全体の基本的な考え方から見直す必要のあることが明らかとなってきた。これは本研究の最大の成果であり、次年度の最大の課題でもある。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となるH28年度は、本研究の主たる目的である「幼児造形教育法の確立」を達成するために、「環境による保育」の研究継続と、蓄積されたデータの分析とまとめを中心に行う。 大きく分けて2つの推進方策を考えている。1つは、素材を大切にした具体的な造形遊びの実践研究であり、他方は、研究協力園での園内研修の継続による造形環境のシステム研究である。0歳から6歳までの幼児と造形遊びを行い、保育者との対話を大切に記録しながら発達に応じた遊び方とその援助について調査を行う。研究協力者の援助を得ながら生態心理学的な行動分析を取り入れ正確な遊びの分析を行う。 学会において発表を行うと同時に、国内外の研究者と連携しながら、レッジョ・エミリア市の保育への取り組みなどの研究を深め、子どもの造形遊びの環境について検討を行う。年間を通じて園内研修や指導計画に関わることで保育現場に対して具体的な提案をできるようにする。H28年度は、新たに岡山県立盲学校、岡山市立政田小学校や学童保育などでの汎用的な粘土遊びからも実戦データを得ることを予定している。また、申請当初予定されていなかったが、H29年度の「第68回 造形表現・図画工作・美術教育研究全国大会(岡山大会)」の運営委員会相談役及び就学前教育部門の研究指導助言者として委嘱されたため、H27~H29年度にわたって、岡山市立鹿田幼稚園にて粘土遊びに関する共同研究を行い、本研究が深く関わって全国大会にて公開保育及び研究発表を行うこととなった。 今後の研究発表計画は、8月に第65回日本美術教育学会(滋賀)、11月に日本乳幼児教育学会第26回大会(兵庫)にて発表を行い、日本保育学会第70回大会(岡山:H29.5)にて総括的な発表を行う予定である。
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Research Products
(4 results)