2014 Fiscal Year Research-status Report
アメリカ進歩主義期における特別な教育的配慮の理論と実践に関する史的研究
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26381302
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
千賀 愛 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (10396335)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ジョン・デューイ / 実験学校 / 特別な教育的配慮 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、1890年代から1920年代のアメリカで展開された新学校・進歩主義学校の理論と実践を特別な教育的配慮の観点から明らかにすることを目的としている。 平成26年度は、4年間の計画の1年目として、「デューイ実験学校における子どもの学び合いと特別な教育的配慮の実践」に関する検討と「1910年代のインディアナポリス市における移民・貧困問題と学業不振児の実態」を明らかにするための資料調査(インディアナポリス歴史協会・インディアナ州立図書館)を実施した。インディアナポリスの資料調査では、文献検索では発見できなかった資料を発見するなど、一定の成果があったが、分析については次年度以降の課題である。 前者ついては、日本デューイ学会(学術登録団体)の学会誌に「デューイ実験学校における子どもの多様性と個人差への視座」の論文が掲載された(査読付)。本論文では、実験学校の教育実践のうち、体育・算数・読み書きの活動における子どもの困難や個人差の問題にどのように対応していたのかを示し、実験学校がその後のデューイの教育思想形成にどのような影響をもたらしたのかを検討した。同校では、各グループの担任が子どもの身体状態の観察や保護者の相談を行っていたが、教科担任として複数のグループ(年齢段階)の子どもとかかわりながら、教師間で子どもの成長・発達の姿や学習上の課題を共有するために実践記録を活用していた。デューイの「子どもとカリキュラム」(1902) では、「教育過程を構成するうえで、基本となる要因は、未成熟で未発達な存在」であり、「教育過程とは、それら未成熟と成熟という両者による作用」、すなわち「相互作用」を意味していた。この「未熟性」の概念は、1916年の著書「民主主義と教育」において深化し、「成長する力は、他者を必要とすることと可塑性に依存している」とし、未熟性を成長・発達の可能性として積極的に位置づけた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本デューイ学会紀要に掲載された論文は、査読を経て掲載に至ったことで一定の成果を公表することができた。 日本特別ニーズ教育学会では実験学校の体育活動におけるコーディネーションの位置づけを教師の実践報告やシカゴ大学報の資料を用いて分析し、学会発表を行った。 またインディアナポリスの資料調査については、1910年代は電子化されている教育・福祉関係の資料も増えているなかで、現地の図書館で電子化されていない文献を見つける事ができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、アメリカ教育史学会などの国際的な場において発表の機会を得たい。英文校閲の予算が必要であるため、旅費や文献費用とも調整しながら計画を進めたい。
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Causes of Carryover |
国際学会誌(Adapted Physical Activity Quarterly)への投稿文を英語で準備していたが、英文作成に想定した以上の時間を要したため、英文校閲の謝金を執行することができなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰り越した予算は、人件費・謝金の枠で英文校閲費用として支出する予定である。
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Research Products
(2 results)