2015 Fiscal Year Research-status Report
発光色を近赤外でチューニングできる水溶性シリコンナノ粒子の合成
Project/Area Number |
26390024
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
白幡 直人 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, 独立研究者 (80421428)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | シリコン / ナノ粒子 / 近赤外発光 / バイオイメージング / 二光子励起 / チューニング / 水溶性ナノ粒子 / In-vitro |
Outline of Annual Research Achievements |
世界で初めてシリコンナノ粒子を使った「近赤外ー近赤外」蛍光イメージングに成功した。研究成果の概要を次に示す。 1)生体の分光窓と呼ばれる波長域(λ=700ー1000nm)でPLスペクトルのチューニングに成功した。各スペクトルはいずれも対称性が高く半価幅が狭い優れたスペクトル性状を有していた。各発光波長域で絶対発光量子収率>30%を達成した。これらの値はイメージングに要求される収率1%を遙かに超える高い量子収率である。 2)シリコンナノ粒子表面をダブルシェルで包み込むことにより、水および緩衝液内で長時間安定に分散させることに成功した。さらに、最外シェルの一部を化学的に変性し、他官能基を導入する手法を開発することで分子識別機能を付与することにも成功した。また、該手法を利用して最外シェルを化学的に変性した後に、有機色素を導入することで、色素とシリコンの間で光励起キャリアを移動させることにも成功した。 3)シリコンナノ粒子は二光子励起に大変適した電子構造を有していることを見いだした。実証例として、当該励起法を用いることで、近赤外励起ー近赤外発光のメカニズムに基づいてIn-vitro下での細胞蛍光イメージングに達成した。今後、高解像度で効率良く低ダメージな蛍光イメージングが可能になると期待される。さらに生体深部イメージング実現への可能性が見えてきた。 以上の成果は特許出願され、国際ジャーナル誌へ掲載された。下記に示す。 特許:名称「水溶性近赤外発光ナノ粒子及び蛍光標識材」発明者「チャンドラ ソロブ、白幡直人、ウィニック フランソワズ」出願番号「2015-059049」出願日「平成27年3月23日」出願人「物質・材料研究機構」国際学術論文誌:Nanoscale 2016, 8, 9009-9019。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究計画の進展を判断した理由は、次の2点に帰着する。 1)シリコン結晶をナノ粒子化することで現れる電子構造に基づいて放射されるPLスペクトルはサイズに依存するので近赤外での波長可変が実現できる。本年度はさらにスペクトル物性(発光効率、スペクトル形状、およびスペクトル幅)が、マルチタスク蛍光イメージングに適していることを実験的に示すことに成功した。 2)二光子励起法とシリコン蛍光体は相性が良いことを初めて実験的に明らかにした。 PLスペクトルの波長位置はサイズに依存して大きく異なるが、光吸収端はほぼ同じである。これらの特性はナノ結晶化されたSiの電子構造に特徴付けられるため、他の半導体では現れない。面白いことに光の吸収端は常に350nm付近にあることから、汎用されるフェムト秒レーザーの二光子励起プロセスで格別に効率良く光励起できる。 3)研究計画当初はSiナノ粒子への分子識別機能付与までを考慮してこなかったが、本研究で利用したシェル用の高分子(Pluoronic)が、水和性や生体親和性だけでなく、官能基変換にも対応できたことから、異分子導入による電荷移動にまで研究を大きく進展させた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画段階の予定は既に達成されている。さらなる発展に向けて次の2点に集中する 1)発光機能のさらなる向上を目指したドーピング技術を開発する 2)ナノ粒子表面への保護基の体積を小さくして、微小経路の蛍光イメージング(たとえばニューロンのイメージングなど)に対応できる水溶性Siナノ粒子の開発を進める。
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Causes of Carryover |
Siナノ粒子に付与した2つの機能(分子認識機能およびキャリア輸送機能)のメカニズムを深く考察するためには、低温下で光励起キャリアの移動を観察する必要がある。そのためには低温PL測定が必要になるが、既存設備であるクライオスタットの修理が必要である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
修理費が100万円ほどと見積もられているので、繰越額をほぼ全額使用する計画である。
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