2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26390054
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
鈴木 良尚 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 准教授 (60325248)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤原 貴久 徳島大学, 大学院ソシオ・アーツ・アンド・サイエンス研究部, 教務補佐員 (10648695)
佐藤 正英 金沢大学, 総合メディア基盤センター, 教授 (20306533)
佐崎 元 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (60261509)
勝野 弘康 立命館大学, 理工学部, 助教 (70377927)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 液液相分離 / 融液様成長 / リゾチーム / 分子ステップ |
Outline of Annual Research Achievements |
(具体的内容):遠心沈降濃縮法によって、脱塩状態のリゾチーム水溶液において液液相分離を誘起させ、その濃厚相から結晶化するプロセスを明らかにすべく実験を開始した。その結果、液液相分離後の超濃厚溶液から核生成・成長することを確認した。また、成長した正方晶系リゾチーム結晶の{110}面および{101}面上の、分子ステップの観察に成功した。まだ初期の段階ではあるが、得られた結果をまとめると、1. ステップのモルフォロジーは、通常の塩析法によって得られた正方晶系結晶の各面上で観測されているものと比較して、特に大きな変化は見られなかった。2. ステップカイネティック係数が通常のものよりも小さくなったが、オーダーは同じであった。これらの観察結果から、融液に近い高濃度の溶液からの成長(融液様成長)であるにもかかわらず、従来の溶液成長とステップ上のキンク密度や活性化エネルギーに大きな違いがないことが明らかになった。 (意義):本研究では、超濃厚溶液からの結晶化を融液成長のモデル系としてとらえているため、どこまで素過程に近く迫ることができるかが最も大きなポイントであった。そのもっとも重要なポイントであったステップのその場観察に年次計画よりも早く成功したことは、本研究の目的達成に向けて大変意義深い。 (重要性):従来、融液からの結晶成長機構は、その素過程レベルでの実験的研究が大変難しいと考えられてきたが、タンパク質分子をそのモデルとして使うという、新しい切り口で臨むことによって、水溶液成長で切り開かれた、速度論的な取り扱いが行える可能性が開かれたことは重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最初のポイントであった、融液様成長状態におけるステップ構造のその場観察にまず成功したことが挙げられる。これは当初の計画よりも早い実現を果たすことができた。しかし、超濃厚溶液の実験的なハンドリングの難易度が高く、溶解度を正確に測定するという点で課題が残っている。 分子ステップをさらに高分解能でその場観察するための、共焦点顕微鏡システムの有効性の確認も行い、偏光ビームスプリッタを備えたシステムでの実施を計画に加えることにした。 また、融液様成長のモデルとしての、斥力粒子系におけるブラウニアンダイナミクスシミュレーション実験も順調に進んでいる。 以上が、おおむね順調に進展しているという理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
26年度の当初計画にはなかったが、下記の目的の為に3Dプリンタを購入した。 1. 現段階では超濃厚溶液を一度遠心濃縮器から取り出して、その場観察セルへ移し替えているが、超濃厚溶液であるため、蒸発のスピードが速く、手早くしないと固まってしまう。そこで、3Dプリンタによって、遠心フィルタと観察用セルを融合したその場観察・遠心濃縮セルを作成し、実際の実験に活用する。また、このセルを用いて、分光学的な手法によってより正確に溶解度を決定する予定である。 2. 顕微鏡観察の際、分子ステップのコントラストを出すためには、結晶面を光軸に対してできる限り垂直にセットする必要があるが、そのための顕微鏡ステージ上に設置する治具をやはり3Dプリンタを使って設計する予定である。 溶解度の測定と分子ステップの前進速度の測定を有機的に行うことにより、融液様成長の速度論的な解析を実施する予定である。
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Causes of Carryover |
鈴木良尚:271175円(3月中に購入済みの物品の支払いが4月以降になるため)、佐﨑元:150000円(26年度予定の研究会・学会の発表が27年度になったため)、佐藤正英:66720円(26年度予定の研究会・学会の発表が27年度になったため)、勝野弘康:230000円(26年度予定の研究会・学会の発表が27年度になったため)。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
鈴木良尚:すでに納入済みの物品の支払いを行う。 佐﨑・佐藤・勝野:旅費として使用予定。
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Research Products
(15 results)