2017 Fiscal Year Research-status Report
基板を利用した原子層薄膜の新たな電子物性発現への理論的研究
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26390063
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
小林 功佳 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 教授 (80221969)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 表面界面電子物性 / 計算物理 / 単原子層薄膜 / トポロジカル絶縁体 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、非対称な構造をもつ単層遷移金属ダイカルコゲナイドについて理論的研究を行った。遷移金属ダイカルコゲナイドは、遷移金属の単原子層の両側をカルコゲンの単原子層が挟む3層構造をしている。通常は、両側のカルコゲンは同じ元素であるが、2017年に、異なるカルコゲン原子層によって挟まれた非対称な構造の遷移金属ダイカルコゲナイドが新たに生成された。本研究では、この非対称構造の遷移金属ダイカルコゲナイドの原子構造および電子状態を第一原理計算法により計算し、その物性を理論的に調べた。 単層の遷移金属ダイカルコゲナイドの構造は、大きく分けると1H構造と1T構造に分かれる。1T構造には2倍周期の1T’構造もある。特に1T’構造は、単層で量子スピンホール状態、積層系でワイル半金属になるとの理論的予測があり興味深い。また、1H構造と1T構造の系のエネルギー差は比較的小さく、電子ドープによりこれらの構造間を相転移させることも実現している。本研究では、非対称構造の単層遷移金属ダイカルコゲナイドとして、MoSTe、MoSeTe、WSTe、WSeTeの4つの系を対象としてその安定構造、電子状態、電子ドープの効果について研究した。 計算の結果得られたことは、次の通りである。まず、1H構造と1T’構造の全エネルギーを比較したところ、計算した4つの系すべてで1H構造の方が安定であることがわかった。次に、電子ドープした場合について計算したところ、4つの系すべてにおいて、電子のドープ量にほぼ比例して1H構造と1T’構造の全エネルギー差が減少し、あるドープ量で1T’構造の方が安定になることがわかった。最後に、電子状態を計算したところ、1H構造では、MoSeTeとWSeTeは直接バンドギャップ、MoSTeとWSTeは間接バンドギャップの半導体となる結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最近実験的に生成された新たな系を対象に研究を行い、研究結果が出始めているため。
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Strategy for Future Research Activity |
新たに生成された系の理論的研究をさらに進める。
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Causes of Carryover |
研究途中で新たな研究成果が発表されたため、その研究成果を踏まえて本研究を遂行する必要性が出てきたため。
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