2015 Fiscal Year Research-status Report
表面プラズモンを利用した有機光デバイスの高効率化技術と深紫外線光源の開発
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26390080
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
桑村 有司 金沢大学, 電子情報学系, 准教授 (10195612)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 表面プラズモン / 有機光デバイス / 深紫外光源 |
Outline of Annual Research Achievements |
パネル型有機発光デバイスの効率は低く、特に光取り出し効率においては有機膜内で発生した光の80%以上が空気側に取り出せず損失となっている。安価で高効率の有機白色光源の実現には、可視領域の広い波長帯で空気側への光出力強度を増強する必要がある。アルミ基板表面をArイオンでスパッタエッチングして荒れた凹凸構造を形成した後、銀膜を蒸着した光増強用基板と、平らなガラス基板上に銀膜を蒸着した標準基板を準備した。それらの基板の上に発光色素添加有機膜を成膜してフォトルミネッセンスによる発光強度の違いを実測・検討した。1)青色色素添加した1層のPMMA発光膜、2)青色と黄色色素添加した2層のPMMA積層膜、3)青色、黄色、赤色色素添加した3層のPMMA積層膜について調査した。基板表面の凹凸構造の不均一性のため、発光強度にばらつきが見られたものの、上記1)2)の光増強試料は標準試料にくらべ、10-20倍の光増強が観測された。 一方、深紫外光源開発では、ラフネスを有するアルミニウム・真空界面を伝搬する表面プラズモンを遅延導波路として利用し、電子ビームの群速度と表面プラズモンの位相速度を一致させて表面プラズモンを発生させ、ラフネスにより光へ散乱させる方式である。現有する装置では200nmより短い波長帯での観測は難しい。そこで、可視波長で、両者の速度を一致させて表面プラズモン発生させ、光への変換できるかの動作実験検証を試みた。銀回折格子表面上に沿って電子ビームを走行させ実験を行った。この実験配置では電子ビームが銀回折格子に接触することによる遷移放射による発光も観測され、提案原理に基づく発光との分離が必要となるが、電子ビームの加速電圧を変化しながら調査した結果、表面プラズモンと電子ビームの両者の速度が一致する条件で発光のピークが生じる傾向が観測され、上記原理に基づく発光現象であると推測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
Ⅰ)蛍光色素添加有機膜からのフォトルミネッセンス増強 スパッタエッチングで荒らしたアルミ基板上に銀膜蒸着した基板を利用した色素添加有機膜からのフォトルミッセンス強度は標準試料のそれに比べ10-20倍程度の増強が観測され、研究実施計画のとおり進行している。問題点は、アルミニウム基板上に作製したラフネス形状や寸法が不均一であるため、発光増強の面内均一性が悪い。また、ラフネスの寸法が200-500nm程度と荒かったため、銀・PMMA膜・空気で形成される光導波路モードに結合した発光成分は空気側へ取り出せるが、銀・PMMA界面の表面プラズモンに結合した発光成分は取り出すことができていない。表面ラフネス寸法を50nmから200nm程度に微細化する必要があり、スパッタエッチングの最適条件を検討する。 Ⅱ)深紫外光源の開発 紫外光を発生させるためのプラズモン導波路構造設計や電子ビームとの相互作用条件などの計算による設計を主として行ってきた。提案原理に基づく可視の波長での動作検証実験を行い、同発光現象を観測しつつある。しかしながら、40kV程度の電子ビーム加速でアルミニウム膜・真空界面に局在する表面プラズモンを発生して深紫外への変換ができることを実証するまでには至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
Ⅰ)蛍光色素添加有機膜からのフォトルミネッセンス増強 光増強用基板の表面凹凸構造を50nmから200nm程度に微細化して、表面プラズモンに結合した発光成分からの光取り出しについても再実験を行う。一方、青色、黄色、赤色色素添加した3層のPAAM積層膜や1層のPMMA膜に複数の蛍光色素を添加する構造など、添加する複数の色素の光吸収や発光の波長特性の関係を十分検討して更なる広帯域化を実証していく。また、積層したPMMA膜の間に新たに銀薄膜を追加して複数の表面プラズモンモードを利用して光の状態密度を増やす構造で、パーセル効果による発光速度の増減効果、さらに有機発光層内にダイヤモンドやGaPなどの可視帯で透明かつ間接遷移型のナノ粒子を添加して、ミー散乱による光取り出し効果についても実験的に確かめていく計画である。 Ⅱ)深紫外光源の開発 基板・アルミニウム膜・真空構造に局在できる表面プラズモンを数十kV程度の電子ビームを真空界面に沿って走行させて、紫外光領域の表面プラズモンが発生できることを実験で検証していく。表面プラズモンから光への変換には、基板またはアルミニウム膜界面でのランダムな荒れを利用する計画である。
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Causes of Carryover |
平成27年度の残金で、購入希望の備品購入ができなかったため、残金760,098円を平成28年度にまわした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度残金と平成28年度直接経費で、購入希望の備品を購入する。
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Research Products
(4 results)