2015 Fiscal Year Research-status Report
凝縮ガスのプラズマ励起によるナノ構造制御カーボン系薄膜の低温合成に関する研究
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26390095
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
佐藤 哲也 山梨大学, 総合研究部, 准教授 (60252011)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中川 清和 山梨大学, 総合研究部, 教授 (40324181)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | カーボン / アモルファス / 低温 / 薄膜 / 水素原子 / 凝縮 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、1、その場・実時間観察法と薄膜物性評価から、薄膜形成における反応プロセスに関する基礎的知見を得ること、2、ナノレベルで構造制御するための制御因子を明らかにすること、にある。初年度の研究から、昇華温度近傍で合成した薄膜は緻密性が高いことから、本年度は、成長する薄膜のサブサーフェスにおける水素の定常濃度の制御を試みた。【実験】H 原子のトンネル反応と電子線誘起反応を組み合わせた極低温薄膜合成法により、種々の炭化水素(CH4, C2H2, C6H6, C10H16)にパーフルオロカーボン(CF4)および希ガス(Ar,Xe)を原料に添加し、アモルファスカーボン薄膜(a-C:H, a-C:F)の極低温合成を行った。高感度反射赤外分光法によりその場・実時間観察(in-situ IR-RAS)を行った。C-Hn伸縮振動スペクトルの波形分離を行い、結合水素濃度(CH) や sp2/sp3比率を調べた。分光エリプソメトリにより膜厚および光学定数を、レーザーラマン散乱 分光により D, G バンドの強度比を求め、XPS より組成比と結合状態を調査した。さらに透過電子顕微鏡(TEM)観察により炭素膜構造を解析した。【結果】C2H2にCF4を炭化水素へ添加(<50%)した場合、sp2が増大しD/G比が小さくなり、バンドギャップ低下する傾向がみられた。C6H6にCF4を添加した場合にも 同様の傾向は見られるが、 C2H2に比べ堆積レートが大きくD,Gバンドは観測されなかった。TEM観察結果もCF4添加により結晶性の向上が認められたことから、F による H 引き抜き反応により、より黒鉛化が進んでいるものと考えられる。また、希ガスを原料ガスに添加することにより製膜温度速度の増大と緻密性向上が認められたことから、薄膜成長表面の凝縮層において準安定励起種による原料ガスの分解促進やマイグレーションに効果があるものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1.ナノレベルでのカーボンの構造解析の観点から、透過電子顕微鏡による薄膜の断面構造観察を試みたたが、カーボンの本来の構造を保った状態での試料の研磨・加工が難しく有用な情報が得られなかった。 2.真空排気ポンプや除害装置の故障により、サンプル作成の遅れが生じた。また透過電子顕微鏡装置(学内共用設備)の不具合が長期化した。これにより、当初計画した薄膜の構造解析が滞り、陽電子寿命測定法による空孔型欠陥や分子間空隙の学外依頼のタイミングを逸した。 遅延した実験と未消化の分析経費等は、次年度へ繰り越すことになった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの経緯を踏まえ、下記事項を優先的に実施する。 1.アモルファスカーボン中のグラッシーカーボン、グラファイト構造を原子・分子レベルでさらに詳細に実証するために、応力を緩和する意味で、有機金属化合物を用いて不純物元素(Si,Ge,Tiなど)のドープ効果を検証する。 2.極低温におけるナノ構造(グラファイト、フラーレン、アモルファス)発現のメカニズムに関する知見を得るために、表面に照射する励起種(低速電子線、希ガス準安定励起種、低速イオン)の照射量依存性について系統的に調べる。反射式飛行時間型質量分析計を用い、初期生成物のカーボンクラスターのその場観察を行う。合成した薄膜の深さ方向の化学結合状態変化はクラスターイオン衝撃によるX線光電子分光法により、また欠陥解析は電子スピン共鳴法によりを行う。
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Causes of Carryover |
1.ナノレベルでのカーボンの構造解析の観点から、透過電子顕微鏡による薄膜の断面構造観察を試みたたが、カーボンの本来の構造を保った状態での試料の研磨・加工が難しく、分析点数が予定より少なくなった。 2.真空排気ポンプや除害装置の故障により、サンプル作成の遅れが生じた。また透過電子顕微鏡装置(学内共用設備)の不具合が長期化した。これにより、当初計画した薄膜の構造解析が滞り、陽電子寿命測定法による空孔型欠陥や分子間空隙の学外依頼のタイミングを逸した。上記理由に、当初計画していた特殊材料ガスの選択・購入を延期した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前年度未消化の構造分析を中心に分析経費に費やす。表面に照射する励起種(低速電子線、希ガス準安定励起種、低速イオン)の照射量依存性について系統的に調べるために、励起ビーム部の装置改良費に一部充てる。欠陥解析など物性評価に要する光源など消耗品を購入する。
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