2014 Fiscal Year Research-status Report
シンクロトロン放射光の偏光・位相精密測定による光の軌道角運動量の解明
Project/Area Number |
26390112
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
佐々木 茂美 広島大学, 放射光科学研究センター, 教授 (00542284)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小池 雅人 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門量子ビーム応用研究センター, 研究員 (50354973)
今園 孝志 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門量子ビーム応用研究センター, 研究副主幹 (50370359)
宮本 篤 広島大学, 放射光科学研究センター, 助教 (90403617)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 放射光 / 円偏光アンジュレーター / アンジュレーター放射高次光 / 光の軌道角運動量 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題初年度の平成26年度は、分子研UVSOR-S1セクションに挿入された2台のAPPLE型アンジュレータから放射される光の干渉パターンをBL-1ビームラインの最下流に設置した可視―紫外域に感度を持つファイバーマルチチャンネル分光器とCCDカメラを用いて測定した。 実験は、干渉パターンの観測波長がCCDの感受波長領域に入るようにリングエネルギーを600, 500, 400 MeVに下げて行った。測定は、波長245nm付近と355nm付近で、種々の軌道角運動量量子数を持った高次光の組み合わせで行った。その結果、円偏光の2次高調波と1次光との干渉で螺旋状の強度分布が観測され、円偏光のヘリシティを変えることにより螺旋の向きも反転すること、2次光と1次光のヘリシティを逆にすると偏光子の回転に伴い螺旋は2倍の回転角で回転すること、1次光と3次光の干渉では二重螺旋が観測され、逆ヘリシティの2次光と3次光の干渉では三重螺旋が観測される等、理論的に予想される干渉パターンと非常に良い一致をみた。 これら系統的な干渉実験の結果から、円偏光アンジュレータからの2次光は、右回りあるいは左回りという円偏光のヘリシティに対応してl=±1、3次光はl=±2の軌道角運動量を持つことが明らかにした。 本課題研究のこれまでの成果は、平成26年11月に開催された「先端放射光源に関する研究会」で発表したほか、第28回放射光学会年回、第70回日本物理学会年会で発表した。本課題研究では世界初の実験結果が得られており、現在ジャーナルへの投稿準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題研究では、円偏光アンジュレーターから発する高次光が軌道角運動量を持つことを実験的に検証し、この新奇な性質が放射光利用研究の新しい探針となり得る可能性を探ることを最終目標としている。 これまでに、異なった次数の軌道角運動量量子数を持つ光同士の干渉を観測することにより、理論予想を証明する基本的実験的検証は行った。2年目である平成27年度中に光と物体との干渉実験を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目である平成27年度は、様々な次数の軌道角運動量量子数を持つアンジュレーター高次光と細いワイヤーとの干渉実験、あるいはダブルスリットを通過した光の干渉縞を系統的に観測することにより、円偏光アンジュレーター高次光の持つ新奇な性質の更なる解明を進める。
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Causes of Carryover |
分子研UVSORでの実験に必要なUV-CCDは本科研費で購入したが、その他の光学部品はUVSORにあるものを借りた他、広大放射光センターで予備実験に使用したレンズやダブルスリットは大学の運営費交付金で購入した。また旅費についても学会発表は大学の運営費交付金から支出したため次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度には国際会議での発表を予定しており、そのための旅費に充当することを予定している。
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