2016 Fiscal Year Research-status Report
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26400032
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
松下 大介 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (90333591)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | シンプレクティック / ラグランジアン |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度に得られた結果は以下の二点である。
1. 固定点自由化 代数多様体上に豊富な直線束が与えられた時、定義から何倍かすることで直線束から定まる線形系は固定点はなくなり、さらに何倍するかすることで射影空間への埋め込みを定める。このとき何倍すれば十分なのかを調べることは古典的な問題であり、特殊な多様体、例えばK3曲面やアーベル多様体では固定点がなくなるのに二倍、射影空間への埋め込みを定めるのに三倍すれば十分なことが知られている。この問題を既約シンプレクティック多様体とその上の豊富な直線束に対して検証し、多様体と直線束の組の変形のモジュライ空間を利用して、K3の n 点のヒルベルトスキームと変形同値な多様体とその上の豊富な直線束に関して、直線束の Beauville-Bogomolov 指数が 2 であればモジュライの中で固定点がなくなる組は稠密な開集合をなすこと、4 であれば射影空間への埋め込みを定める組がやはりモジュライの中で稠密な開集合をなすことを示した。
2. 有効垂の構造 代数多様体の有効な直線束の第一チャーン類は二次のコホモロジーに錐を定める。この錐を有効錐と呼ぶが、その生成系を知ることで、元の代数多様体の自己同型群の構造を知ることが出来、これを利用して多数の興味深いK3曲面の実例が構成されている。K3 曲面に対しては有効錐は非特異な有理曲線から定まる直線束の第一チャーン類で生成されることが知られていた。これと同様の定理を有理曲線を既約例外因子に置き換えることで、既約シンプレクティック多様体に対して証明することが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
昨年度までに得られた結果の一つに射影空間上のラグランジアンファイブレーションを持つ既約シンプレクティック多様体があるとすれば、それは位相的には射影空間の直積の有限被覆という、かなり限られたものがある。そのため、望ましいラグランジアンファイブレーションを持つ既約シンプレクティック多様体を構成するためには被覆の次数と分岐点がどのようになるかを知ることが次の問題となるのだが、その部分の考察にまだ手がつけられていない。また得られた結果を論文の形で発表するという作業にかなりの遅れが生じており、早急に論文の形で発表することが望まれる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度はこれまで得られた結果を論文にまとめることを第一に行う。その際、K3 曲面の n 点ヒルベルトスキームに変形同値なものや一般化クンマー多様体などこれまでに知られている具体例から射影空間の直積への分岐被覆を詳しく見ることによって、被覆の次数や分岐点の様子を探り、それを元にして新たなラグランジアンファイブレーションの構成法を見出したい。また二年前から続いているアメリカ、フランス、ドイツ、イタリアの当該分野の30代以下の若手の研究者を集めた既約シンプレクティック多様体に関する研究集会を本年度はイタリアで9月に開催し、既約シンプレクティック多様体に関する今後の発展の方向を探りたい。
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Causes of Carryover |
8月に開催した国際研究集会において海外からの研究者を計7名招聘したが、全員が国際渡航費を辞退したため、当初の予算を消化することが出来なかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017年9月の中旬にイタリア・レビコにおいて国際研究集会を開催するが、日本側からは計10名の研究者を派遣する予定である。これらの研究者の海外渡航費に関しては日本側が負担することとなっており、これに充当する予定である。
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Research Products
(5 results)