2015 Fiscal Year Research-status Report
代数解析および数式処理による高階偏微分方程式系の解の構造の研究
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26400110
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
片岡 清臣 東京大学, 数理(科)学研究科(研究院), 教授 (60107688)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 佐藤超関数 / 初期値境界値混合問題 / 超局所解析 / D-加群 / 回折現象 / Lopatinskii条件 / 偏微分方程式系 / マイクロ台 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. D_X-加群に対する混合問題の超局所解析の座標普遍な定式化:昨年立てた今後の研究方針に沿い,1991年に研究代表者が導入した層B_Y(O_X)を使って一般の連立解析的偏微分方程式系に対し混合問題の超局所解析理論を座標不変な形で一般化することに成功した.すなわち,微分方程式が定義される多様体と余次元1の解析的境界の複素化をX, Yとし,Yを非特性境界面とするX上の連接左D_X-加群Mと境界条件にあたる連接左 D_Y-加群Nに対し混合問題の三つ組(M,N,h)なる概念を定義し,境界条件を満たす解を制御する連接左D_X-加群M_hを構成した.混合問題の超局所解析とはB_Y(O_X)に値を持つ M_hの解の層複体のマイクロ台を上から評価することであり,それをMの特性多様体に対する条件と三つ組(M, N, h)に対するLopatinskii条件との組み合わせによって与えた.ただし最終的な混合問題に関する応用定理などにはB_Y(O_X)やM_hは現れない.また同時にB_Y(O_X)に現れるB_Y(.)をX上の層複体に作用する関手としても定義できることを示した.すなわちYを中心とするXの実モノイダル変換Z上の層複体の作る導来圏への関手として構成し,それが正則関数層の場合,従来の解析的な定義などと一致することを示した.
2. G. Lebeau の回折現象の解析的正則性に関する難解な理論を,代数解析的な手法による別証明につなげるための手掛かりとしてマイクロ関数の立場から見直し,その本質的な部分のより理解しやすい形の解説を与えた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2015年度は10月に京都大学において海外からの著名な研究者を招いて超局所解析の国際会議が開かれた.その講演発表の準備のため,第2の研究課題である混合問題の超局所解析や回折現象のLebeau理論の研究に時間を割く必要があった.そちらの方はある程度進展したが,そのため第1の研究課題であった円の族を含む曲面の決定に関する計算機による本格的な計算にとりかかることができなかった.また年度後半には日本数学会の日本語雑誌の編集長に指名されたため慣れないこともあって多くの時間を取られた.
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Strategy for Future Research Activity |
1,2015年度には円を含む曲面の決定に関する数式処理に備えて従来のMathematicaに加えてMapleを購入した.2014年度に購入した数式処理用のサーバーに入れたこの2つのソフトにより5階偏微分方程式系の常微分方程式への帰着の具体形,または連立方程式系をみたすための初期条件が満たすべき必要条件を計算し問題の解決につなげたい.
2,層B_Y(0_X)を使う混合問題の超局所解析の応用としてLebeauの回折現象の解析的理論の別証を始めとする応用を見出したい.
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Research Products
(5 results)