2016 Fiscal Year Research-status Report
代数解析および数式処理による高階偏微分方程式系の解の構造の研究
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26400110
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
片岡 清臣 東京大学, 大学院数理科学研究科, 教授 (60107688)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 蔵本予想 / 共鳴現象 / 非線形発展方程式 / ガウス分布 / 共鳴極 / 解析性 / 佐藤超関数 / 漸近展開 |
Outline of Annual Research Achievements |
指導大学院生である馬田優に対して九州大学の千葉逸人准教授が蔵本予想の数学的厳密証明を与えたとされる論文 A proof of the Kuramoto conjecture for a bifurcation structure of the infinite dimensional Kuramoto model(Ergo. Theo. Dyn. Syst, 35(2015), 762-834) を題材として修士論文指導を行っていたがその中の関数解析学的な論理に決定的な飛躍があることを発見した.当該論文は千葉氏が第2回藤原洋数理科学賞奨励賞を受賞した重要な論文となっていて振動子の集まりが弱い相互作用のもとで共鳴する,という京都大学の蔵本由紀教授が提案した有名な同期現象の数学モデルに初めて数学的に厳密な証明を与えたものであった.その中に使われ,全体の議論の主軸となる線形位相空間での弱収束に関する議論に明らかな論理の飛躍が見つかった.しかし我々の手法である代数解析的な方法,すなわち1変数佐藤超関数論や上半平面で正則な関数の漸近展開を主軸とする方法を使えば証明が明快になるだけではなく,論理飛躍となっている部分が回避できる可能性が見えてきた.実際,馬田との共同研究で当該論文の共鳴極に関する主張で証明が省略されている命題にも明快かつ量的な評価も含む証明を与えることに成功した.また千葉の論文では振動子の周波数に関する分布関数がガウス分布,コーシー分布だけに限られていたがより一般的な解析的分布関数の場合にも,共鳴極と言われる一般化固有値の位置を具体的に計算する見通しがつき,現在馬田との共同研究を進めている,結果の一部はすでに馬田の修士論文となっている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究は本課題に必ずしも合致しないがその手法は1変数佐藤超関数や擬微分作用素の漸近展開理論と同じ代数解析的手法であり,同期現象のような重要な非線形数理現象の解明に役立ちそうだ,ということは本手法の奥行きの広さを証明している.この意味で研究は順調に進展しているといえるが他方で大学院生の指導に思いの外時間を取られただけではなく,思いがけず日本数学会理事に選出され,財務・会計や本部ビル大規模修繕の責任者に指名されたことから十分な研究の時間が取れず,本課題そのものは進展させることができなかった.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の結果である同期現象に関する千葉逸人理論の代数解析的な立場からの論理飛躍のない別証明を与えること,本課題について最終的な成果を得ること,とくに数式処理を利用して我々の得た5階非線形偏微分方程式系(2連立の場合)の解の構造を決定することである.
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Research Products
(3 results)