2016 Fiscal Year Research-status Report
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26400146
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
服部 哲弥 慶應義塾大学, 経済学部(日吉), 教授 (10180902)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 確率論 / 数理科学 / 確率過程論 / 大数の法則 / 流体力学極限 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,確率順位付け模型の流体力学極限とロングテールの分析という,確率過程論に軸足を置きつつ統計学ないしは経済学に及びうるテーマを中心としている.確率順位付け模型と呼ぶ多自由度確率過程(粒子系)の無限粒子スケール極限(流体力学極限)の数学的証明を主たる具体的な目標としていた. 本年度は前年度の主定理証明成功を受けて論文の改訂という地味な作業が中心になった.違う方向性の性質を組み合わせて主結果を得るので,応用性が増すようになるべく一般性のある複数の論文を出版しようと考えている.論文のうち1本は学術誌Funkcialaj Ekvaciojから掲載が決定したとの連絡を受けたが,実際の出版についてはまだ連絡が無い.他の論文に至っては審査の進行状況が不明のまま時間が経過している.世界的に本研究の方向の進展を目指す研究がなく,良く言えば高度に特色がある独創的な研究と自負するが,学術が成果競争に偏る現在の趨勢では適切な査読者が見つからないことも含めて審査に時間がかかり論文出版の見通しが立たない.昨年度の報告で予言したとおり,掲載してくれる学術誌を探すための長い道のりの途中である.なお,状況を鑑みて,プレプリントを論文蓄積ウェブサイトarxiv.org,および,自分のウェブページに貼ったので,成果開示の観点からは打てる対策を打っている. 審査結果を待つ期間も,論文の改訂を続けている.特に,昨年度の報告記載のとおり,関数空間に値を取る独立確率変数の大数の強法則という,数学の基礎的・古典的だが繊細な内容を持つ問題についての知見を整理して,結果を適切に呈示する設定を選び直すべく結果の数学的位置づけの再検討を続けている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
位置に依存する非有界な強度を持つ確率順位付け模型の流体力学極限の証明の論文の改訂作業を行っている.整理は進んでいると考えている.ただし,関数値確率変数の大数の強法則という古典的な問題において可分性の微妙な問題によって素朴な定式化に困難があることが,流体力学的極限の特徴につながる可能性が新たに見えたので,基礎的なところを少していねいに整理しておくことが望ましいと新たに考えるようになった.
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Strategy for Future Research Activity |
確率順位付け模型は先頭に跳ぶ規則という単純で旧知な原理に基づくが,多自由度確率過程(粒子系)の流体力学極限の厳密な証明という観点での取り組みが本研究課題代表者の周辺に限られるためか,論文の掲載(採択)に時間がかかる.引き続き,学術誌への掲載に向けて努力を続けるが,長い研究時間を割く覚悟が必要である.一方,数学的基礎付けの一つにあたる,関数空間値独立確率変数の大数の完全法則は,古典的な話だが,まとまった基礎教科書が見当たらないので,これを整理して解説書を整備することも,学術研究の冬の時代の作業としては,有益と思われる.現実のデータの本格的な当てはめは,本研究課題終了後,次の研究課題が採択された後に,その研究期間で取り組むことになりそうに思う.
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Causes of Carryover |
昔からの科研費の指示に従って,年度末の学会出席交通費を予算に計上して一部自費負担の上で使い切る予定だったところ,助成金では前年度の出費も次年度に全額支出可能との連絡があったので,そのように処理したものであって,実質的には年度内に支出は完了しており,その意味では実質的な繰り越しはない.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記のとおり計画どおりである.
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Research Products
(3 results)