Project/Area Number |
26400176
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
谷 温之 慶應義塾大学, 理工学部, 名誉教授 (90118969)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井口 達雄 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (20294879)
野寺 隆 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (50156212)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | free boundary problem / Navier-Stokes equations / MHD / Hele-Shaw flow / primitive equation / Hasegawa-Wakatani 方程式 / 国際研究者交流 / ポルトガル, イタリア |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)大気/海洋2相primitive方程式系の自由境界問題に対して, 時間局所一意強可解性を証明した. 海洋primitive方程式に対する時間大域解を小データ下で構成することに成功した. 水の波の運動に対する研究では, (i)水底の凹凸の時間変化が比較的小さい場合,水の波基礎方程式系は変形Green-Naghdi方程式により高次近似されることを証明した; (ii)基礎方程式系が有する変分構造より導かれるLagrangianにおける速度ポテンシャルを近似して得られた近似Lagrangianに対するEuler-Lagrange方程式の初期値問題は, 一般には非可解(初期面が特性曲面なので)であるが, 可解のための必要十分条件の特徴付けを与えた. 自明解における線形近似方程式系が,浅水波近似と見なせ,Green-Naghdi方程式より高次の近似方程式であることを示した. (2)Hele-Shawセル中のfingering現象において, ニュートン流体運動に対して境界濡れ効果を考慮に入れた自由境界問題の弱非線形解析を行った. この結果の非線形数学解析の一環として, 濡れ効果も表面張力効果もない, 物理学的には一番簡単な場合の滑らかな解 (数学解析的には易しくない) の時間局所的存在を証明した. (3)トカマク内の抵抗性ドリフト波乱流の(2粒子)モデル方程式であるHasegawa-Wakatani方程式に対して, その初期-境界値問題の一意可解性をステパノフの意味での概周期関数空間の枠内で証明した. (4)圧縮性Navier-Stokes方程式に対する古典的MHD2相自由境界問題の古典解が一意的に存在することを証明した. (5)相転移平均場モデル方程式の一つであるPenrose-Fife方程式に対し, 物理的に正しい境界条件(先行論文では殆どが不正)の下で時間大域強解の構成を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究テーマが多岐に亘るので, 各々が同程度に進捗している訳ではないし, 年度計画案からは遅れ気味なテーマもある. しかし, テーマ相互間には強い関連性がある. (1)primitive方程式の大気/海洋2相自由境界問題に対する時間局所一意強可解性を証明した. 先行研究がrigid lid の仮定下で議論されているのに比べ, 自由境界問題としての最初の数学的結果である. 時間大域解を海洋primitive方程式に対して, 小データの下で構成した. 小データの下ではあるが, 弱解ではなく強解である点は評価できる. (2)Radial Hele-Shaw問題はill-posed問題であり, 実験結果と理論結果が相違している.それを解消するため, 境界条件に濡れ効果を課した自由境界問題の弱非線形解析を行い, 解の不安定性, tip-splitting性を数値的に確認した. これらの厳密な証明が必要で, その第1歩として, 境界でのjump条件下で1相, 2相問題の古典可解性を証明した. (3)トカマク内の抵抗性ドリフト波乱流の(2粒子)モデル方程式であるHasegawa-Wakatani方程式に対する初期-境界値問題がステパノフ-概周期関数空間において一意解をもつことを示した. この結果は新しい. これを含む他モデル方程式に対する自由境界問題として議論することがより現実的である. (4)圧縮性Navier-Stokes方程式に対する古典的MHD2相自由境界問題の古典解の一意存在結果は, 先行研究が非圧縮性Navier-Stokes方程式に限っていたのに比べ, 宇宙物理学の諸問題への応用の観点からも重要である. 以上の理由から, 現在までに得られた結果は, 先行研究を凌駕していると同時に, 将来に亘る研究に対する展望を齎すもので, 統合的に見て, おおむね順調に進展していると判断している.
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Strategy for Future Research Activity |
(1)圧縮性Navier-Stokes方程式に対するMHD自由境界問題を中心課題として研究を推進する. 真空と圧縮性粘性MHD自由境界問題をまず考察する. 真空中には流体はないが, 磁場は作用しているとみなす. 時間大域解存在問題を非圧縮性粘性MHD自由境界問題に対するSolonnikovの結果を参考にしながら考察する. さらに, 本研究課題の主要目標であるEMHDをベースにしたMHD近似方程式に対する諸問題を定式化し, その数学解析を行う. その際, 流体は圧縮性粘性流体を基本とするが, 非圧縮性(非)粘性流体の場合に対しても議論を展開する. その第1段階として, 分極・磁化を考慮に入れてMHD近似し, 新MHD方程式を導く. そのMHD方程式と圧縮性Navier-Stokes方程式に対する自由境界問題の可解性について研究する. (2)気相/固相自由境界問題研究として, 昇華現象すなわち圧縮性粘性流体と固体に対する自由境界問題の可解性について考察する. ここでも, Stefan問題の場合と同様, 運動学的境界条件に対する取り扱いが問題となる. その点を明確にするため, 非圧縮性粘性流体に対するStefan問題の結果(1999-2002)の再検討から始める. (3)気相/液相自由境界問題研究として, 大気1相, 大気/海洋2相primitive方程式に対する自由境界問題の時間大域解の構成を試みる. これに関連する最重要事項は, 大気, 海洋におけるhydrostatic近似, rigid lidの仮定の正当性であるが, これらについて考察する. (4)固相/固相自由境界問題研究として, (粘) 弾性体の亀裂伸展問題を考察する. 2次元の場合はHele-Shaw問題と共通点があるので, 合わせて研究を進める. ここでも, Hele-Shaw近似についての吟味が必要である.
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Causes of Carryover |
下記2氏による講演を予定していたが, 日程の都合上実現できず, その謝金分が未使用になった. V. A. Solonnikov: 非圧縮Navier-Stokes方程式に対する古典的MHD 自由境界問題; K. R. Rajagoapl: (粘)弾性体における亀裂伸展に関する諸問題
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2015年度 Solonnikov, Rajagopal 両氏共来日を予定しているので, その際講演会を開催し, 謝金に充てる.
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