2014 Fiscal Year Research-status Report
中性子星合体におけるrプロセス元素合成と重力波対応天体
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26400237
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
和南城 伸也 独立行政法人理化学研究所, 階層縦断型基礎物理学研究チーム, 研究員 (30327879)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
関口 雄一郎 京都大学, 基礎物理学研究所, 特定研究員 (50531779)
石丸 友里 国際基督教大学, 教養学部, 准教授 (90397068)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 元素合成 / rプロセス / 中性子星 / 状態方程式 / 電子捕獲 / ニュートリノ / 銀河系 / 化学進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主要課題である、中性子星合体におけるrプロセス元素合成(金やウランなど、鉄より重い元素の起源)の計算を行った。中性子星合体のシミュレーションには、2つの中性子星の質量および高密度状態方程式について、様々な組み合わせが可能である。本研究の初年度であることを考慮し、まず、観測的に最も典型的と考えられる中性子星質量の組(1.3太陽質量+1.3太陽質量)について、一つの高密度状態方程式を適用してシミュレーションを行い、rプロセス元素合成の計算に適用した。その結果は太陽系のrプロセス元素組成とほぼ合致し、特に、これまでの研究では説明できなかった、銀などを含む比較的軽いrプロセス元素についても、観測と矛盾なく説明することができた。これは、先行研究では無視されていた、電子・陽電子捕獲やニュートリノ捕獲などの弱い相互作用反応を正確に考慮したことによるものである。研究結果は学術雑誌アストロフィジカル・ジャーナルで発表され、また、理化学研究所のプレスリリースで取り上げられた。さらに、元素合成の計算に基づいて、rプロセス元素の銀河科学進化計算を行った。銀河系がより小さい銀河の合体から形成されたというシナリオに基づき、これまでの中性子星合体説の問題であった、銀河初期における中性子星合体の寄与についても観測と矛盾なく説明できることを示した。研究成果はアストロフィジカル・ジャーナルで発表された。以上より、これまでの超新星説に代わり、中性子星合体がrプロセス元素の起源である可能性が高いことが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初年度の目標は、まず、中性子星合体の典型的なモデルについての元素合成計算の環境を整えることであった。その最初の試みで、これまでの研究では説明できていなかった問題、すなわち銀などの軽いrプロセスの合成も同時に説明するという問題が解決される可能性を示すことができた。さらに、2年目以降の目標であった銀河化学進化の研究についても進めることができ、これまでの問題であった中性子星合体の銀河初期における寄与についても、一定の成果を収めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、観測的に可能な連星中性子星の質量範囲(1.2~1.5太陽質量)について、様々な組み合わせについてのrプロセス元素合成計算を行う。また、複数の高密度状態方程式についても同様の計算を行う。それぞれの結果について太陽系のrプロセス元素組成と比較を行い、どのような中性子星質量、状態方程式の組み合わせがrプロセス元素の起源の典型的モデルとなるかについて検証する。また、それぞれのモデルについてrプロセス新星の光度曲線計算を行う。これは、KAGRA等の次世代重力波検出装置によって中性子星合体からの重力波が捕らえられた場合、その光学対応天体を特定するために重要なテンプレートとなる。銀河化学進化モデルについてもさらに改善していく。
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Causes of Carryover |
研究分担者2人の未使用分。次年度に研究分担者が使用する旅費が必要となる見込みがあったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の研究分担者の旅費として使用予定。
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Remarks |
NHKコズミックフロント「エレメントミステリー ~元素が支配する 宇宙と生命~」(2014年9月18日放送)、科学雑誌ニュートン記事 FOCUS「金やレアアースは,「中性子星の合体」でつくられた!?」(2014 年 10 月号)、JST サイエンスポータル ニュース速報「宇宙の錬金術師は中性子星の合体か」(2014年7月22日)で本研究の成果が紹介された。
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[Presentation] 中性子星合体のrプロセス2014
Author(s)
和南城伸也
Organizer
「宇宙核物理実験の現状と将来」研究会
Place of Presentation
大阪大学核物理研究センター(大阪府茨木市)
Year and Date
2014-08-07 – 2014-08-08
Invited
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