2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26400245
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
森山 翔文 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (80402452)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 弦理論 / M理論 / 膜 / チャーン・サイモンズ理論 / 超共形対称性 / 行列模型 / 双対性 / 位相的弦理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
Aharony-Bergman-Jafferis-Maldacena(ABJM)理論は、M理論のM2膜を記述する理論として提唱されている。本研究の目的は、ABJM理論とその拡張となる超共形対称チャーン・サイモンズ理論からM理論を理解することである。実際、超対称理論の局所化技術により、ABJM理論の解析が大いに進展し、M2膜やM理論に関する多くの非自明な新しい関係式、双対性が発見されてきた。例えば、研究代表者らの研究によれば、ABJM理論の分配関数は閉じた弦の位相的弦理論の自由エネルギーを用いて記述され、また、超対称ウィルソンループの真空期待値は開いた弦の位相的弦理論の自由エネルギーで記述される。 前年度に論文雑誌PTEP(日本物理学会)にこれまでの発展を総括する特集論文を掲載したが、その準備でABJM理論のフェルミ気体形式について再考する機会を得た。ABJM理論の分配関数を、非自明な一粒子ハミルトニアンを持つフェルミ気体の分配関数に書き換える際に、閉弦形式と開弦形式の二種類の書き換えがあり、それぞれ目的に応じて有用であることを特集論文で詳しく説明した。 しかし、双線形項を持たない閉弦形式の導出方法は複雑で、計算方針も必ずしも明確ではなかった。それに対して、研究代表者らはこれまでの導出方法よりもはるかに簡潔な導出方法を開発することができた。この簡略化させた方法を用いて、本年度は、閉弦形式を超対称ウィルソンループの真空期待値に対しても適用できるように拡張した。この閉弦形式を用いれば、分配関数(閉じた弦)と超対称ウィルソンループの真空期待値(開いた弦)の間の非自明な関係式(とその拡張)を、積分経路の変更に帰着して証明することができる。この双対性はM理論の隠れた対称性を示唆しているであろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ウィルソンループの真空期待値にも閉弦形式が適用でき、また、その閉弦形式を用いて開弦と閉弦の間の双対性を証明することができたのは、予想を超えた進展であった。年度の前半では、この結果を論文にまとめ、いくつかの研究会で研究成果を発表した。年度の後半は、大阪市立大学で開催された国際会議の準備のため、研究の進捗状況はやや遅れ気味であった。平均的に全体としてはおおむね順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、これまでの研究成果を発展させるとともに、新しい方向にも発展させたい。特にABJM理論を拡張した超共形対称チャーン・サイモンズ理論に視野を広げ、理論の間の双対性や位相的弦理論との関係などについてより詳しく調べていく予定である。 また、次年度は最終年度として、海外の研究会に積極的に参加し、研究成果を広く公表するとともに、新しい視点を取り入れて次の発展に繋げたい。本研究テーマとなる分配関数や超対称ウィルソンループ真空期待値の解析は可積分性と深く関係することが期待されるが、次年度はゲージ理論や弦理論の可積分性に関する国際会議に参加し、会議参加者らと詳しく議論することで、本研究成果が持つ意義を再考し、さらなる発展に繋げる予定である。また、研究内容で厳密値計算の部分は計算機の性能に依存するので、今年度は性能の高いノートパソコンを購入する予定である。
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Causes of Carryover |
本年度は、大阪市立大学で国際研究集会を開催するために研究費を使用する予定だったが、招待講演者の多くが自分の研究費で旅費や滞在費を支出をしたため、予定より支出金額が下回った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は研究費交付の最終年度で、研究成果を発表し、他の研究者と議論をするために、国外旅費として使用する予定である。また、厳密値の計算に関する研究では、計算能力の高いパソコンが必要であるため、性能の高いノートパソコンを購入する予定である。
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