2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26400245
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
森山 翔文 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (80402452)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 弦理論 / M理論 / 膜 / チャーン・サイモンズ理論 / 超共形対称性 / 行列模型 / 位相的弦理論 / 可積分性 |
Outline of Annual Research Achievements |
Aharony-Bergman-Jafferis-Maldacena(ABJM)理論は、M理論のM2ブレーンを記述する理論として提唱されている。本研究の目的は、ABJM理論とその拡張となる超対称チャーン・サイモンズ理論からM理論を理解することである。実際、超対称理論の局所化技術により、ABJM理論の解析が大いに進展し、M2ブレーンやM理論に関して多くの非自明な関係式が発見されてきた。例えば、研究代表者らの研究によれば、ABJM理論の分配関数は閉じた弦の位相的弦理論の自由エネルギーを用いて記述され、また、超対称ウィルソンループの真空期待値は開いた弦の位相的弦理論の自由エネルギーで記述される。 本年度前半の二つの掲載済みの論文により、行列模型と位相的弦理論の対応関係が、より一般的な超対称チャーン・サイモンズ理論に拡張された。その際、自由エネルギーを特徴づけるBPS指数は、代数曲線に作用するワイル群の表現に対応しており、ランク変形に応じて様々な部分群に分解されることがわかった。 また、後半はABJM理論の解析に対して拡張を行った。まずは行列模型と位相的弦理論の対応関係の背後にある可積分構造を探索し、ABJM理論の超対称ウィルソンループの真空期待値が、可積分性を強く示唆するヤコビ・トゥルーディ恒等式を満たすことを証明した。この結果は一般的な定理として成り立ち、数学系の論文雑誌に掲載決定されている。 さらに、これまでABJM理論の超対称ウィルソンループの一点関数のみに着目してきたが、行列模型として自然に二点関数が定義され、この二点関数は一点関数と同様にフェルミガス形式で記述されることがわかった。また、詳しく解析を進めたところ、これまでの一点関数の間の様々な関係式が、二点関数というより大きな枠組みの中で統一的に理解されることがわかった。この結果は論文雑誌に投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまでABJM理論や超対称チャーン・サイモンズ理論に対して地道に調べてきたことが、二点関数、可積分性、表現論など大きな枠組みの中で統一的に理解できることがわかり、当初の予想を超えて飛躍的に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究において、M2ブレーンを理解するために、ABJM行列模型や超対称チャーン・サイモンズ行列模型を詳しく解析してきた。その中で、二点関数、可積分性、表現論など予期せぬ新しい方向に大きく進展してきている。これらの新しい方向性より、M2ブレーンに対する視点が大きく拡がったが、まだその関係性を十分に理解できたわけではない。今後もABJM行列模型や超対称チャーン・サイモンズ行列模型の可積分構造を詳しく調べ、M2ブレーンやM理論の理解へ繋げたい。また、より一般的に非摂動論的な弦理論の理解に向けて、M2ブレーンに限らず、一般次元の超対称共形場理論の相関関数に対しても研究を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
研究課題を順調に推進しているが、研究課題に関連する研究会が来年度複数開催されるため、研究会参加に必要な旅費滞在費を繰り越した。
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