2014 Fiscal Year Research-status Report
ILCにおけるトップ・クォーク質量と湯川結合定数の測定
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26400255
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
清 裕一郎 順天堂大学, 医学部, 准教授 (60571338)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | トップ・クォークの質量決定 / トップ・クォークの湯川結合定数 / 量子力学 / ボトモニウム / 非相対論的な束縛状態 |
Outline of Annual Research Achievements |
マッチング係数の3次補正を取り込み、閾値付近でのトップ・クォーク対の生成断面積がQCDのNNNLOの精度で計算できるようなコンピューター・プログラムのサブルーチンを組んだ。これによって、QCDの3次補正を全て取り込んだ数値計算のための準備が整ったことになる。これに合わせて3次補正の計算に用いる有効理論の枠組みや全てのマッチング係数の知識を纏め現象論的な解析を行う論文を執筆中であり、近々投稿する予定である。 閾値付近でのトップ・クォーク対の生成断面積の計算を遂行するための有効理論の方法はボトモニウムやチャーモニウムにも応用できる。トップ・クォーク対の生成断面積は未だ実験結果が存在しないが、ボトムやチャーム系では様々な質量や崩壊幅の実験結果が存在する。そこで、我々がトップの生成断面積で用いた有効理論の方法でボトムやチャーム系のクォーコニウムに対して質量公式や崩壊幅を調べておくことはトップ・クォーク対生成断面積における摂動級数の収束性をテストするために重要である。このような狙いを持ってボトモニウム系の任意の量子状態の質量公式をNNNLOの精度で計算した。この結果からボトモニウムにおいては、MS-bar質量を使った摂動展開は収束性が良く実験結果を良く再現してことが分かった。これらの解析からトップ・クォークの束縛状態の場合にもQCDのNNNLO補正まで含めた理論計算がトップ・クォークの質量の高精度決定を可能にすると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
崩壊幅が大きな不安定粒子としてトップ・クォークを扱った有効理論の枠内で、既にいくつかのグループによって高次補正が計算されている。本研究ではこれらの効果を我々のコンピューター・プログラムに組み込むためのサブ・ルーチンを開発中である。これらの主要な効果を取り込めば我々が目指す精度のトップ・クォーク生成断面積が得られると期待される。本研究1年目の成果としては、QCDのNNNLOのオーダーの量子補正を計算するためのプログラムが完成したことがあげられる。バグを取り除く作業やラン・テストを行った後に現象論的な研究へと移行する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで行ってきた閾値付近でのトップ・クォーク生成断面積のQCDのNNNLO計算のコンピュータ・プログラムが完成したことで、今後は現象論的な解析を行う段階にきている。ヒッグス粒子の発見とその質量が125GeV程度であることから、トップ・クォーク生成断面積に対する効果も5%程度はあると期待される。よって、電弱理論の量子補正まで含めて数パーセントの理論精度を実現すれば、閾値付近のトップクォーク生成断面積からヒッグス粒子とトップ・クォークの湯川結合定数を測定することも可能である。最終目標のためには、様々な量子補正をシステマティックに理論計算に取り込んでいくことが重要である。2年目、3年目の研究計画は様々な効果をコンピュータ・プログラムに統合する作業が中心となる予定である。当初の予定通りに着実な成果を上げていきたい。
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Causes of Carryover |
昨年の予算額をぴったりと使い切ることができなかったために小額ではあるが234円の残額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
残った234円は今年度の図書購入費の一部として使用する予定である。
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