2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26400283
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Research Institution | Kanto Gakuin University |
Principal Investigator |
山田 泰一 関東学院大学, 理工学部, 教授 (70200722)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | クラスターガス的状態 / 希薄アルファ凝縮状態 / 単極子遷移強度 / ハイパー原子核 |
Outline of Annual Research Achievements |
強相関系である原子核には、平均場描像では理解できない様々な多粒子相関が現れるが、クラスター状態はその代表例である。最近クラスターガス状態という新しい存在形態が明らかにされ、宇宙における元素合成で重要な役割をしている12Cホイル状態はその典型例である。このクラスターガス状態の拡がりと深さを追究することが本研究の目的であるが、本年度は13Cに関する論文発表を至上課題とし、20Neや10Beの構造、212Poにおけるα崩壊、C-13-Λハイパー核、さらに核物質の研究を進めた。 13Cでは、従来の理論で説明が困難な第1・第2励起1/2-状態への単極子遷移強度が他の物理量も含めてクラスター模型で初めて説明できることを示し、さらにクラスターガス状態が1/2+状態に存在することを明らかにした。これらの成果は本論文として学術雑誌に掲載された。一方、新物理探究と関連した13Cにおける電気双極子モーメントの研究を新たに進展させた。また、Hyper-THSR波動関数をC-13-Λに適用してハイパー核におけるガス状態についての新しい知見が得られた。 20Neにおける12C+α+αガス状態の研究に関しては、12Cの角運動量(0+,2+,4+)との結合を考慮し、ガス的状態の記述に必要不可欠なチャンネル結合型ガウス関数展開法による定式化を完成させた。この事により12C+α+α閾値エネルギー近傍までのガス状態を含む0+状態の構造研究を進展させることが可能となり、予備的な計算を始めた。 非局在型のクラスター波動関数であるTHSR波動関数を用いた10Beの構造研究を進めて、10Beにおいても単一のTHSR波動関数で良く記述できることが分かり、非局在的描像がよく成立することを示した。また、212Poに対して、4体相関を顕に含む理論的枠組みを発展させ、α崩壊幅の実験値を良く再現することを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
13Cについては、「3α+n」直交条件模型での研究成果が本論文として学術雑誌「Physical Review C」の92巻に掲載された。この成果は「単極子遷移強度がクラスター状態同定に有効な物理量である」という申請者らが最近提唱している理論を支持するものである。さらに、13Cにおける電気双極子モーメントの研究を進め、この成果は論文としてまとめて投稿中である。一方、Hyper-THSR波動関数によるC-13-Lambdaハイパー核の構造研究が大きく進展し、ガス状態や鎖状態など興味深い知見が数多く得られた。 20Neにおける12C+α+αガス状態の研究については、チャンネル結合型ガウス関数展開法による定式化を終了し、次年度での本格的な数値計算を進める足場を構築することができた。プログラミング化を行い、予備的な計算を進めている。 THSR波動関数による10Beの構造研究は日本・中国・フランス・ドイツの共同研究の成果として本論文としてまとめて、学術雑誌に投稿した。一方、212Poにおけるα崩壊についての研究成果は昨年度の成果(「Physical Review C」の第90巻に掲載)に引き続き、同誌の第92巻に掲載された。 一方、原子核構造研究の基本的課題で長年未解決の核物質の問題に関して、新しい枠組みで研究する方法論を提唱し、予備的な結果を日本物理学会で発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度に定式化を終了したチャンネル結合型ガウス関数展開法による「12C+α+α」直交条件模型の本格的な数値計算を進める。さらに、クラスター状態同定に有効な物理量である単極子遷移強度も含めて分析を行う。結合状態近似での分析結果をまとめて、28年度末までに論文を作成・投稿を目指す。その後は、来る実験データとの対応をつけるために、複素回転座標法を用いて、共鳴状態の構造とアイソスカラー型の単極子励起強度関数の分析を行う。さらに、クラスターガス状態の研究を進める上で避けて通れない5αガス状態や5α鎖状態を含めて、励起エネルギーで20MeV領域までのクラスター状態の解明(29年度)を目指して、「5α直交条件模型」での本格的な研究を進めるための準備を開始する。 13Cにおける電気双極子モーメントの研究(投稿中)については、28年度中の学術雑誌での掲載を目指す。 16Oについては4α直交条件模型やTHSR波動関数を用いて、4α鎖状態およびα+12C(ホイル状態)の研究を大きく進展させ、1967年以来の問題の解決を目指す。予備的な成果が既に得られているが、これを踏まえてより大規模な数値計算を行う。11Bに関しては、これまでの3/2-及び1/2+以外の角運動量状態の構造研究の数値計算を終了させて、28年度末までに論文作成と投稿を目指す。 ハイパー核研究に関してはHyper-THSR波動関数をC-13-Lambdaに適用して、クラスターガス状態など興味深い結果が得られているので、今年度中に論文を作成・発表できるように準備を行う。また、中性子過剰核におけるクラスター構造と単極子遷移強度の研究をスタートさせて、今年度から本格的な研究ができるようにする。 新たに開発した核物質計算法を用いて、対称核物質の計算を進め、従来の計算法との比較・検討を行い、論文の作成・投稿を28年度中に目指す。
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Causes of Carryover |
次年度に計算コストがかかる数値計算を行うために、ワークステーションの購入(ハードウェアおよびソフトウェア)を予定しており、次年度の交付額と合算して、この経費の一部として使用するため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に購入予定のワークステーションの経費(ハードウェアおよびソフトウェア)の一部として使用する。
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