2016 Fiscal Year Research-status Report
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26400283
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Research Institution | Kanto Gakuin University |
Principal Investigator |
山田 泰一 関東学院大学, 理工学部, 教授 (70200722)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 原子核クラスター / クラスターガス状態 / アルファ凝縮状態 / モノポール遷移強度 / ハイパー原子核 / テンソル最適化フェルミ球(TOFS)理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
強相関系である原子核には、平均場描像では理解できない様々な多粒子相関が現れるが、クラスター状態はその代表例である。最近クラスターガス状態という新しい存在形態が明らかにされ、宇宙における元素合成で重要な役割をしている12Cホイル状態はその典型例である。本研究の目的はクラスターガス状態の拡がりと深さをハイパー核を含めて追究することである。本年度はレビュー論文の発表以外に、クラスター核物理に関する国際研究集会(WNCP2016)を2016年11月に関東学院大学で開催(参加者45名、うち外国人研究者は12名)した。一方、関連課題として、核物質について新しい理論(テンソル最適化フェルミ球TOFS)を構築し進展させた。具体的な実績を以下に示す。 (a) ハイパー核と通常核におけるクラスターガス状態の類似性と異質性を明らかにするために、C-13-Λハイパー核の構造分析を行った。Λ粒子がホイル状態以外に12Cの鎖状態や高次節状態に結合した新しい状態が出現し、12Cとの比較から興味深い結果が得られた。 (b) 10BeにおいてTHSR波動関数による定式化と構造分析を行った。単一のTHSR波動関数だけで、殻模型的構造の1st 0+状態と鎖状構造の2nd 0+状態の実験データと他の模型計算の結果を良く再現することを明らかにし、この成果はクラスター状態における非局所描像の成立を裏付けた。 (c) 核力におけるCP対称性の破れを13Cで評価するために、13Cの構造を良く記述する3α+n直交条件模型を用いて分析を行い、パリティー混合の効果とその機構の詳細な分析を行った。 (d) テンソル最適化フェルミ球(TOFS)の枠組みで核物質計算を行うための理論構築と数値計算を行った。これらの予備的な成果を日本物理学会2016年秋季大会(2016年9月)および第72会年次大会(2017年3月)において発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1975年のノーベル物理学賞受賞40周年を記念した学術雑誌の特集号(「Physica Scripta」の第91巻)において、本研究計画の成果を含むクラスター核物理のレビュー論文「題名:Alpha particle clusters and their condensation in nuclear systems」が掲載された。10Beの構造研究については、日本・中国・フランス・ドイツの共同研究の成果を論文にまとめて、学術雑誌(「Physical Review C」の第93巻)に掲載された。13CにおけるCP対称の破れについては、現在、改訂論文を投稿中である。また、C-13-Λハイパー核のTHSR波動関数を用いた構造研究についてはほぼ論文が完成している。一方、核構造研究の基本課題である核物質問題に関して、テンソル最適化フェルミ球(TOFS)という新しい理論の枠組みを構築し、2016年9月と2017年3月の日本物理学会で発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
29年度は最終年度のため、これまでの研究を一層進展させると同時に、既に得られている重要な研究成果をまとめて論文の作成・掲載を目指す。さらに、テンソル最適化フェルミ球(TOFS)理論の完成を目指すと共に、核物質の数値計算を進める。以下に、具体的な個別テーマの方策を示す。 (a) C-13-Λハイパー核のTHSR波動関数による構造研究では論文を完成させて、29年度中に学術雑誌に投稿・掲載を目指す。 (b) 13CにおけるCP対称性の破れについての3α+n直交条件模型による論文は投稿中であり、29年度中に学術雑誌での掲載を目指す。また、次の段階として、19FにおけるCP対称性の破れについての準備を行う。 (c) 16Oについてはこれまで実績を踏まえて、4α鎖状態やα+12C(ホイル状態)の研究を4α直交条件模型やTHSR波動関数で大きく進展させ、1967年以来の問題の解決を目指す。11Bに関しては、これまでの3/2-及び1/2+以外の角運動量状態の構造研究の数値計算を終了させて、論文作成と投稿を目指す。20Neに関しては、チャンネル結合型ガウス関数法による「12C+α+α」直交条件模型の本格的数値計算を進めて、クラスター状態同定に有効な物理量である単極子遷移強度も含めて分析を行う。さらに、5αガスや鎖状態を含めた高励起状態のクラスター状態の解明を目指して、「5α直交条件模型」や「5αTHSR」での本格的な研究を開始する。 (d) テンソル最適化フェルミ球(TOFS)理論の構築を目指し、さらに核物質の数値計算を進める。核力としてアルゴンヌ力(av4’やav8’など)を用いた核物質計算を進める。TOFS理論の論文と数値計算の論文の作成と掲載を目指す。
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Causes of Carryover |
次年度の研究遂行のために必要なソフトウェアの購入と、外国人共同研究者の来日に伴う研究打ち合わせが予定されているために、次年度の交付額と合算して、この経費の一部として使用するため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に購入予定のソフトウェアと、外国人共同研究者との研究打ち合わせの一部として使用する。
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Research Products
(12 results)