2015 Fiscal Year Research-status Report
モット絶縁体近傍の磁性と超伝導の共存相のNMRによる研究
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26400356
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
北岡 良雄 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (70110707)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 銅酸化物高温超伝導 / 高温超伝導発現機構 / NMR/NQR / 反強磁性と超伝導の共存 / 強相関電子系 / 多層系銅酸化物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、銅酸化物高温超伝導の発現機構の解明に向け、ミクロな観点から電子状態を明らかにできる核磁気共鳴実験手法を用いて、乱れのない理想的な銅酸素面を有する超多層型構造をもつ銅酸化物における層毎の電子状態を調べ、キャリアがドープされたモット絶縁体近傍の強相関金属状態の新しい量子物質相の解明を目指している。 27年度は、Tl1256(Tc=100K)、Hg1256(Tc=103K,98K,93K)、のドープ量の異なる4つの六層型銅酸化物の試料に対して、高温域まで十分なNMR信号強度が期待できる、電荷供給層に位置している核(Tl, Hg) においてNMR を行った。 Tl 系の試料においては、NMR 線幅(FWHM) とT_1 測定から明確にT_N を決定できた。NMR線幅(FWHM) は、170 K 以下で反強磁性秩序による増大が見られた。また、1/T_1T の温度変化の極大点と対応しており、T_N 以下で反強磁性が試料全体で均一に起こっていることが分かった。 さらにHg 系の六層型試料においても、低温におけるスペクトルの線幅の増大から磁気秩序の形成を確認でき、ここからT_N を見積もることができた。ドープ量とT_N の関係から六層型の相図を作成すると、反強磁性相が五層型の場合と比べてさらに高ドープ側に張り出していることがわかった。以上の実験から、T_N を決定する重要な要素として面間の磁気結合が関係していることを結論することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
銅酸化物高温超伝導物質の反強磁性と高温超伝導の電子相図を作成するためには、磁気転移温度、T_N を決定することが重要であり、今まで六層型ではT_N を決定出来ていなかったが、205Tl-NMRにおけるFWHM の温度依存性とT_1 測定によってl1256 のT_N を初めて決定することができた。 199Hg-NMR ではNMRスペクトルの線幅(FWHM) の温度依存性からHg1256 のT_N を見積もり、六層型の詳細な温度-ホール濃度相図を求めることができた。反強磁性相が消失する臨界ホール濃度は、五層型と比べると、より高ホールドープ側へシフトしていることが分かった。 さらに、五層系から六層系に銅酸素面が一層増加するだけで、T_N が4倍以上も増大する一方、超伝導転移温度は、100 Kとほとんど変化しない驚くべき結果を得た。その理由として、Tl1245 とTl1256 の比較から面間の磁気結合が強まっていることが明確にった。 さらに、tーJ モデルに基づいた理論計算から得られる相図とよく一致したこと、面内の超交換相互作用J が超伝導と反強磁性の起源となることから、超伝導転移温度は、T_Nの大きさには、あまり依存しない可能性を指摘した。
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Strategy for Future Research Activity |
銅酸化物多層構造の最も内側のCuO2(IP)層ついて、① 層毎のホール濃度を制御させた試料を用いて、超伝導が発現する臨界キャリア濃度の探索し、②反強磁性・超伝導の両秩序変数の相互結合効果明らかにし、③核スピンー格子緩和時間の測定から超伝導状態における磁気励起を調べことによって、理論との整合性についてさらなる検証する。
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[Journal Article] Multiple Antiferromagnetic Spin Fluctuations and Novel Evolution of Tc in Iron-based superconductors LaFe(As1-xPx)(O1-yFy) revealed by 31P-NMR Studies2016
Author(s)
Takayoshi Shiota, Hidekazu Mukuda, Masahiro Uekubo, Fuko Engetsu, Mitsuharu Yashima, Yoshio Kitaoka, Kwing To Lai, Hidetomo Usui, Kazuhiko Kuroki, Shigeki Miyasaka, and Setsuko Tajima
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Journal Title
J. Phys. Soc. Jpn.
Volume: 85
Pages: 053706/1-4
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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