2015 Fiscal Year Research-status Report
重い電子状態における電子正孔対称性:高圧での分光実験による検証
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26400358
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
岡村 英一 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 教授 (00273756)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 高圧力 / 重い電子系 / イッテルビウム化合物 / セリウム化合物 / 赤外分光 / シンクロトロン放射光 |
Outline of Annual Research Achievements |
Ce3+とYb3+はそれぞれf電子1個(f1)およびf正孔1個をもち、単純に考えると両者の間には電子正孔対称性が存在する。事実Ce化合物とYb化合物は共に重い電子状態を示すが、一方で両者の物性には多くの違いも知られている。そこでCe化合物とYb化合物の重い電子状態において、電子と正孔の対称性がどの程度成り立つのか実験的に調べることが本研究の主目的である。実験手法としてはダイヤモンドアンビルセルを用いて試料に常圧から20 GPa程度までの高圧力を印加し、大型放射光施設SPring-8の赤外ビームラインの高圧赤外分光実験装置を用いて、赤外反射スペクトルの圧力、温度依存性を調べた。H27年度は本課題の2年目であり、まずは初年度のYb化合物に関する実験を継続した。すなわちSPring-8での高圧赤外分光実験をYbCu2Ge2について行い、1年目で10 GPaまでで中断していた実験を、16 GPaまで拡張した。その結果、10 GPaまでで観測されていた、スペクトルの顕著な圧力依存性は、10 GPa以上でも継続する結果を得た。また過去に実験を行っていたYbAl2についても再実験を行い、以前のデータよりも精度良く10 GPaまでの光学伝導度を測定することに成功した。この物質でも圧力印加によって大きくスペクトルが変化し、その電子状態の圧力依存性が大きいことを示している。両物質とも、反射スペクトルから光学伝導度を導出して、その電子状態を考察している。一方Ce系物質については、実験時間の不足により新たな測定を行うことができなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画通りに高圧低温での赤外分光実験を行い、Ce化合物とYb化合物での光学伝導度の比較が行えているため。Ce系での実験が若干滞っているが、最終年度で十分挽回できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究結果の概要で述べたように、H27年度はYb系での実験は順調に進んだが、Ce系での実験が思ったように進められなかった。そこで最終年度であるH28年度は、まず圧力誘起超伝導体であるCeCu2Ge2の高圧赤外分光実験を行い、Ce系でのデータ蓄積に努める。同時にこれまでの研究結果をまとめ、Ce系とYb系での実験結果を系統的に解析、考察し、学会発表や論文執筆を行う予定である。
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Causes of Carryover |
高圧実験に用いるダイヤモンドアンビルの破損に備えて物品費(消耗品)を多めに計上していたが、幸い破損が起きなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本課題開始当初は予測できなかった事態として、当該年度初めに代表者が神戸大学から徳島大学へ異動した。このためH27年度については大学院生が不在となり、H28年度のSPring-8での実験のための課題申請において、課金が免除される大学院生による申請が不可能となった。このためH28年度前期のSPring-8実験では50万円程度の費用負担が新たに生じる見込みであり、これを補うために本繰越金を用いる予定である。
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Research Products
(7 results)