2014 Fiscal Year Research-status Report
遍歴強磁性超伝導体における磁場誘起超伝導メカニズムの微視的解明
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26400375
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
徳永 陽 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 先端基礎研究センター, 研究主幹 (00354902)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青木 大 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (30359541)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 強磁性超伝導 / 核磁気共鳴 / 量子臨界現象 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的はウランを含む遍歴強磁性超伝導体URhGeで発見された磁場誘起超伝導の発現メカニズムを核磁気共鳴法を用いて実験的に解明することである。もともと超伝導と強磁性は非常に相性が悪く、これは強磁性による内部磁場が 超伝導の電子対を容易に壊してしまうからである。ところがウラン化合物で発見された強磁性超伝導体では、同じ遍歴電子が強磁性と超伝導を同時に担っており、このことは強磁性揺らぎを媒介とした非BCS 型の超伝導機構の存在を直感的に示唆している。
研究初年度である平成26年度は、Coを10%ドープした URhGe においてCo-NMR実験を行った。低温(1.6K)で磁場方向を変えながら、核スピン-スピン緩和時間 (T2) を測定し、そのデータをもとにスピン揺らぎの強度についての磁場角度依存性を明らかにした。その結果、磁場誘起超伝導が出現する臨界磁場近傍で量子三重臨界点に特有の強い縦揺らぎの存在を見いだした。さらにその揺らぎの磁場異方性が磁場誘起超伝導相の出現と密接な相関を持つことを示した。このことは磁場誘起超伝導が量子三重臨界点近傍の強磁性的な磁気揺らぎを起源とすることを強く示唆している。
これらの成果は、日本物理学会および国際ワークショップで発表するとともに、原著論文としてPhysical Review Letters誌へ投稿し、掲載が確定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、Coを10%ドープしたURhGeにおいてCo-NMR実験を行い、磁気揺らぎの磁場方向依存性を明らかにし、磁場誘起超伝導と磁気揺らぎとの強い相関を明確に示すことができた。また研究成果を国際ワークショップ等で発表するとともに、原著論文として国際的な学術誌に投稿し掲載が確定した。
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Strategy for Future Research Activity |
最近、同じ結晶構造を持ち、同じく遍歴強磁性超伝導体であるUCoGeにおいて、低磁場での核スピンー格子緩和時間の異方性と超伝導臨界磁場Hc2の異方性との間に強い相関があることが示されている。そこで同様の実験をURhGeにおいても急ぎ行い、同じ相関関係が存在するかを検証する。これによりウランを含む磁場誘起超伝導の普遍的な性質を探る。 さらにGeサイトを核磁気共鳴法で観測可能な73Ge核で濃縮した単結晶を準備し、CoをドープしていないURhGeいおいてGe-NMRを実施する。これにより量子臨界点近傍の磁気揺らぎの性質をより詳細に明らかにする。また最近、URhGeの特徴的な結晶構造(UのZig-zag構造)に起因する特異な磁性の可能性が理論的に示唆されているので、NMR測定からその検証も行う。
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Causes of Carryover |
予定されていたフランス国立強磁場研究所での強磁場電磁石を使ったNMR実験が、平成27年度に延期となったため。試料の準備の都合によるもの。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に持ち越し分は、平成27年度に延期となった強磁場下NMR実験の旅費としてそのまま使う。従って平成27年度に請求分の助成金の使用計画に変更はない。
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Research Products
(3 results)