2014 Fiscal Year Research-status Report
U(1)格子ゲージ・ヒッグスモデルの相構造と磁力線・磁気単極子の力学
Project/Area Number |
26400412
|
Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
松居 哲生 近畿大学, 理工学部, 教授 (60257962)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 冷却原子系 / 非等方密度・密度相互作用 / 非等方格子ゲージヒッグスモデル |
Outline of Annual Research Achievements |
H26年度の研究実績は別項「研究発表・雑誌論文」の論文(1),及びプレプリント (2) Y. Kuno, K. Kasamatsu, Y. Takahashi, I. Ichinose, T. Matsui, "Proposal for feasible experiments of cold-atom quantum simulator of U(1) lattice gauge-Higgs model", arXiv:1412.7605. (学術雑誌に投稿中) にまとめられた。 論文(1)では凝縮系物理学研究者向けに格子ゲージ理論を現代的観点からレヴューし,その強磁性・超伝導物質系への応用を概説した。この論文は広く一般に格子ゲージ理論・模型の重要性を喚起するのみならず,本研究のゲージ理論的側面を一般的観点からより深く理解し,研究を強力に推し進めるためにも役だつものとなった。 論文(2)では,2次元光格子上の冷却原子系を格子ゲージモデルのシミュレータとして作動させるための具体的条件(特に密度・密度相互作用)を吟味し,実際に実現可能な実験の設定を複数提案した。また,原子系の時間発展力学を記述するGP方程式を導出し,その解の振る舞いを調べた。 H26年度の本研究の目的・計画は,非等方格子ゲージヒッグスモデルについて (A) その相構造を平均場理論やMCシミュレーションにより決定する,(B) その力学を記述するGP方程式を導出し,解析する,の2点であった。(A),(B)ともに空間2次元の場合については論文(2)で結果を示すことが出来た。論文(2)で得られた結果を見ると,平衡状態の相構造と非平衡状態の相境界は定性的には一致しているが,定量的にはかなりのズレがある。これは非線形・非平衡系の振る舞いは観測量に強く依存する,というもっともらしい仮説の一例を与える点で重要である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画ではまず空間3次元の非等方格子ゲージヒッグスモデルとそのシミュレータとしての冷却原子系についての解析を進める予定であった。しかし,まず実際に実現可能なシミュレータを考察した結果,空間2次元の系がより容易に実現すると思われ,その解析に大部分の時間を使った(研究実績の概要中の論文(2))。そのため3次元系の解析が後回しになったのが若干の遅延の理由である。空間3次元の系については研究実績の概要中の課題(A), (B)ともに2次元と同様の解析が可能であることを確認した段階にあり,解析の結果を得るには至っていない。
|
Strategy for Future Research Activity |
空間2次元の系については結果が得られたので引き継き,計画通りに空間3次元の系について解析を進める。また,2大研究課題「相構造」と「磁力線と磁気単極子の力学」の後者の 2年目の計画である「GP方程式の磁力線と磁気単極子による記述」については,必ずしも実行の必要性がないことがわかった。これは,通常の等方密度相互作用のある原子系に対するGP方程式で渦糸の力学を間接的に調べる手法が,論文(2)で用いた非等方密度相互作用のある原子系のGP方程式の場合にも適用可能であることがわかったためである。この点は研究を順調に進める助けになると思われる。
|