2014 Fiscal Year Research-status Report
地震波解析によるリソスフェア-アセノスフェア境界の高精度マッピングの研究
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26400443
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
吉澤 和範 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (70344463)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 地球内部構造 / リソスフェア / アセノスフェア / 上部マントル / 表面波 / 異方性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,地震学的なリソスフェア-アセノスフェア間の遷移境界(Lithosphere-Asthenosphere Transition = LAT)の空間分布の高精度復元を目的としている.プレート下面に相当するLATは,マントル内部のダイナミクスを反映する地震波速度の異方性とも密接に関係する.本年度はまず,表面波から推定されるS波鉛直異方性(S波振動成分による速度の違い)の空間分布とLATとの関係について,合成テストや大陸域の観測記録を用いて検討した.ラブ波・レイリー波の同時逆解析からS波鉛直異方性を求めるには一般に,(1)鉛直異方性パラメータ(SH波・SV波速度の比)を直接求める,(2)SH波及びSV波の速度を独立に求める,の二通りがある.本研究により,この独立変数の取り方の違いは,LAT分布の推定には影響しない一方,異方性分布の推定には大きく影響することが分かり,(2)の手法が望ましいことが示された.この手法を豪州大陸に応用し,3次元S波速度とLATの空間分布を推定する手法をまとめた論文を国際学術誌に発表した(Yoshizawa, 2014, PEPI).さらにこのモデルから,未だ成因が明らかとなっていない大陸リソスフェア内部(深さ80-100km)の境界層(Mid-Lithospheric Discontinuity = MLD)が,S波鉛直異方性の深さ変化と良い相関を示すという,新たな知見も得られた.表面波とS波レシーバ関数解析の結果と比較しつつ,大陸域のLAT/MLDと異方性分布との関連性を考察した論文を,国際学術誌に投稿中である.一連の成果は,国際学会においても招待講演を行った.さらに,表面波波形の新しい解析法の開発と北米大陸への応用も行い,取り扱いの難しい表面波の振幅データの速度モデル復元への有効性を示し,国際学術誌に投稿中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マルチモード表面波を用いた新しい3次元構造モデルの構築とLATの推定手法を確立し,さらに鉛直異方性分布の復元時の独立パラメータへの依存性など,新たな知見も得られた.また,その成因がいまだ明らかとなっていない大陸リソスフェア内部の境界(MLD)が,地震波速度の鉛直異方性の変化と関係している可能性を示唆する新しい結果も得られ,今後さらなる検討を進める予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
従来の震源-観測点間の波線から得られるマルチモード表面波の位相速度情報を用いたマッピングに加え,高密度アレイの情報をフルに活用した新しいマルチモード解析法の開発や,観測点毎のローカルな情報の活用,さらに,実体波の変換波など,各種地震学的情報を採り入れた,新しい上部マントル境界層のマッピング法について検討を進める.同時に,海域及び陸域でのLAB/MLDの推定と地震波速度の異方性について,更なる検証を行う.
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Causes of Carryover |
当初予定していた初年度後半の海外出張(国際学会発表)を取りやめ,次年度開催の主要国際学会での発表に変更したため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰り越した額は,2年目(平成27年6月)に開催される国際学会での研究成果発表のための外国出張旅費として使用する予定である.
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Research Products
(10 results)