2014 Fiscal Year Research-status Report
極端に強い台風にみられる急激な中心気圧低下のメカニズムの解明
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26400466
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
金田 幸恵 名古屋大学, 地球水循環研究センター, 研究員 (80727628)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 極端に強い台風 / 最大強度の出現位置 / 強度変化特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度の実施計画は、観測や解析データから極端に強い台風を抽出すること、またその環境場を調査することである。そのために、まずRegional Specialized Meteorological Center (RSMC) Tokyo および Joint Typhoon Warning Center (JTWC) より、北西太平洋域のベストトラックデータをRSMCについては1951-2014年、JTWCについては1950-2013年の期間について整備した。さらに、それらを用いて「最低中心気圧900hPa以下、もしくは最大地上1分風速70m/s以上」で定義した極端に強い台風を抽出し、最大強度の出現位置や中心気圧・最大風速といった強度特性を調査した。 併行して、気象庁55年長期再解析を用いて環境場を調査した。さらに、ベストトラックデータから抽出された極端に強い台風数例(たとえば、1958年の狩野川台風、1959年の伊勢湾台風、1961年の第二室戸台風)について、水平分解能および物理過程・パラメータなどの設定を変えた感度実験の結果を解析し、台風の強度変化や強度変化に密接にかかわる内部コア構造を比較した。水平解像度を20km、10km、5kmと細かくした予備実験によると、水平解像度によって台風内部コア域の壁雲や対流活動に大きな違いがみられた。 結果について、「西太平洋上における台風の発生・発達に関する研究集会(2015年3月)」他で発表した。また一本目の論文の投稿準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の実施計画は、観測や解析データから極端に強い台風を抽出すること、またその環境場を調査することであった。 まず、2種類のベストトラックデータを整備して、北西太平洋域の極端に強い台風を抽出した。さらに、抽出した極端に強い台風を含めた北西太平洋域の台風について、最大強度や強度変化といった強度特性の統計的調査を実施した。また、気象庁55年長期再解析を用いて環境場を調査した。さらに、非静力学モデルによる複数の水平解像度および複数の物理設定を用いた感度実験から、水平解像度により台風内部コアの壁雲や対流活動に違いがみられることを示した。 結果について、研究集会にて口頭で発表し議論した。また、論文の投稿準備を進めている。 このことから、本課題はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の研究計画は、極端に強い台風における急激な中心気圧低下を再現することである。 まず、初年度に抽出した北西太平洋域における極端に強い台風について、初年度で検討した設定に基づいて、より高い解像度で数値シミュレーションを実施する。狩野川台風の実験例から、シミュレーションは水平解像度2km以下になると想定される。極端に強い台風における急激な中心気圧低下が再現された事例について、結果を観測等と比較して妥当性を検証する。急激な中心気圧低下が再現されなかった事例においては、その原因を調査することで、急激な中心気圧低下メカニズムに必要な条件について、さらに有効な情報が得られることが見込まれる。また、平成23年度に終了した革新プログラムで実施された水平解像度2kmのJMANHMとCReSSによる実験結果の中で、特に強い台風を選び、その結果も合わせて比較する。 また、準備中の論文を投稿し、国内外の学会にも積極的に参加し、成果の議論・周知に努める。
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Causes of Carryover |
初年度の計画は設備投資とデータ・収集および解析と予備実験が主であった。 データについては、ベストトラックデータおよびJRA55ともに無償で入手可能であった。 計算機資源については、初年度に物品費で購入したサーバーを用いた他、研究室のワークステーションを無償で使用することが可能であった。また、データ蓄積や解析も、物品費で購入したサーバーでの実施が可能であった。出張については、初年度後期に申し込んだ学会や研究会は本年度(平成27年度)の参加となる。初年度の出張は国内中心で、おもに間接経費を用い、その他補助を受けた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰り越した予算を用いて、昨年度2月に申込み、口頭発表が受理された国際学会(AOGS氏シンガポール)に参加し、科研費の成果を発表する。その他、国内の研究集会に参加する。成果をまとめた一本目の論文を投稿し、掲載料を支出する。付随して、英文校閲料も発生する。 名古屋大学の大型計算機を用いて、大規模計算に着手し、その使用料金を支払う。
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Research Products
(5 results)