2014 Fiscal Year Research-status Report
双補完的アプローチによる海洋の中規模渦と海面波浪の消散過程の研究
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26400474
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
相木 秀則 独立行政法人海洋研究開発機構, アプリケーションラボ, 主任研究員 (60358752)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 波と平均流相互作用 / エネルギーフラックス / 運動量フラックス / 重み付け平均理論 / Lagrange平均理論 / 風波 / ロスビー波 |
Outline of Annual Research Achievements |
【海面波浪】 海面から海上100mまでの高さでは,風の鉛直シアによる相対渦度を使って鉛直断面にコンターを描くことができる.これを利用して鉛直semi-Lagrange座標系を構築し,砕波と乱流渦粘性がある状況で擾乱に関する各種統計量(Lagrange擬運動量,Lagrange擬エネルギー,波の活動度,Euler擬エネルギー)の収支式を導いた.その結果,風から波浪への運動量やエネルギーの伝達過程を詳しく定式化することができた.これは代表者がこれまでに培った重み付け平均理論とLagrange平均理論の融合手法を応用したものである.Lagrange擾乱量(理論寄り)とEuler擾乱量(観測寄り)の表現を互いに変換する式も含めて上記の結果をまとめた論文を,ノルウェーの共同研究者と執筆中である.
【中規模渦】 密度座標系に基づく重み付け平均理論を用いた代表者による過去の研究では,どの海域で中規模渦が発達しているのかを明らかにした.渦エネルギーの行方を調べるには,平均流(南極還流,黒潮,メキシコ湾流,アギュラス海流等)による移流や,Rossby波によるエネルギーフラックスを定量化し,相互比較する必要があった.しかし惑星β効果だけではなく,平均流によるシアβ効果や層厚β効果も加味する必要があるため,解析手法が未だ確立されていなかった.さらに赤道域においては準地衡流近似を使えないこともエネルギーフラックスの全球マッピングを阻む要因であった.一方で,中規模渦やRossby波による「波の活動度」や各種「擬運動量」の定式化においては,過去の研究によって,赤道域の特異点問題を乗り越えられることが示唆されていた.そこで,この「波の運動量」の定式化手法に隠された妙薬の詳細を明らかにし,「波のエネルギー」に応用すべく理論的な考察を行った.一連の結果をまとめた論文がJAS誌に受理された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【海面波浪】 大気海洋波浪結合モデルに関する主著論文が沿岸海洋誌に出版された.別の主著論文をノルウェーの共同研究者と執筆中である. 【中規模渦】 ドイツの研究者と共同で執筆した主著論文がJournal of the Atmospheric Sciences誌に受理された.
3つの国際会議(イギリス,フランス,札幌)において招待講演を行った.ノルウェーとドイツの共同研究者の所に,それぞれ訪問し詳細な意見交換を行った.
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Strategy for Future Research Activity |
【海面波浪】 ノルウェーの共同研究者と執筆中の原稿を投稿する.海上1000mから水深100mまでを波浪境界層LESモデルで解き,台風のような強風下の気側と水側の鉛直構造を連続的に再現する為の手法を開発する.
【中規模渦】 赤道域と中緯度域の理想実験が既にそれぞれ終了しているのでその解析論文を投稿する.より現実の海洋に近い再解析やハインドキャスト実験結果についても解析を進める.
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Causes of Carryover |
上記のJAS誌の論文は,頁数がかなり多くなった事に加え受理されたタイミングが年度末だったため,平成26年度内に手続きを行うことができず,出版料に未使用額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
JAS誌の論文の出版料等にあてる.
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Remarks |
[1] 2014年12月に米国サンフランシスコ市で開かれた国際会議(AGU Fall Meeting)においてセッション(Ocean Mesoscale Processes)の共同コンビーナーを務めた. [2] AGUのJournal of Geophysical Research誌より優秀査読者賞が授与された.
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