2014 Fiscal Year Research-status Report
浮遊性有孔虫の新規環境指標の確立:遺伝子・安定同位体・形態の複合解析から
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26400501
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
氏家 由利香 信州大学, 理学部, 研究員 (20573041)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木元 克典 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球環境観測研究開発センター, 技術研究副主幹 (40359162)
石村 豊穂 茨城工業高等専門学校, 物質工学科, 准教授 (80422012)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 炭素循環 / 浮遊性有孔虫 / 遺伝子解析 / 同位体比分析 / 形態分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、浮遊性有孔虫の炭酸塩殻の安定酸素・炭素同位体比に対する生物学的効果を解明し、海洋の古環境、特に炭素循環の指標を確立することを目的としている。本研究では浮遊性有孔虫の生体試料を用い、同一個体で遺伝子解析・形態分析・同位体分析を行い、その生物学的効果を精確に評価していく。そのため、各々3つの分析において使用する試薬や加熱処理などが他の分析へ影響を及ぼしていないか確認する必要があった。そこで、初年度は手法の適性を確認し、基礎データである浮遊性有孔虫の遺伝子解析を行うことに注力した。 1.手法の適性:同一の観測点で同時に採取した個体試料を3つのグループに分け、(1)いかなる試薬も用いない乾燥個体試料、(2)遺伝子抽出用の試薬中で通常の加熱時間で加え遺伝子抽出を行い、殻を分離した試料、(3)加熱時間を通常の3倍に延長し遺伝子抽出・殻の分離を行った試料を作成した。これらの3つのグループの各個体について、microフォーカスCTスキャンを用いて殻の密度を測定し、質量分析計によって安定酸素・炭素同位体比を測定した。これら比較検証の結果、遺伝子抽出で使用する試薬や加熱処理が、浮遊性有孔虫の殻に対し物理的・化学的に影響がないことがわかった。 2.基礎データの取得:海洋環境は時系列(季節)に沿って変化するため、同一観測点で月別試料・海洋環境観測を行っている。これらの試料を用い、遺伝的に異なる浮遊性有孔虫種(遺伝子型)の産出変化を出した。また、遺伝子抽出後の炭酸塩殻は、異なる季節間の試料で形態・同位体比分析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で行っている遺伝子・形態・同位体の複合解析は、当該分野では初めての試みである。そのため、初年度に行った手法の構築と、手法間の影響の有無を検証することは非常に重要である。その結果、手法間で影響を及ぼすようなことがないことが確認された。微小な個体を1個体ずつ分析するため各分析に時間が必要であるが、初年度の手法の比較検証を基に、現在月別試料の分析が順調に進められている。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度で行った手法の比較検証から得られた知見についてまとめる。 さらに、本研究の目的を達成させるため、まず季節間(春・夏・秋・冬)の試料について、浮遊性有孔虫の共生藻の遺伝子解析、炭酸塩殻の同位体比分析を重点的に進める。浮遊性有孔虫の遺伝子型は全て同定済みであるため、成体個体の殻を中心に形態計測を進め、各遺伝子型の形態的特徴を検出する。
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Causes of Carryover |
平成26年度の計画に基づく経費執行について、4月に支払をすべき経費が残っていたため、次年度使用額として繰り越している。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
4月に全額執行した。平成27年度の研究は、当初の計画通り進める予定である。
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article] Exploring photosymbiotic ecology of planktic foraminifers from chamber-by-chamber isotopic history of individual foraminifers2015
Author(s)
Takagi, H., Moriya, K., Ishimura, T., Suzuki, A., Kawahata, H., and H. Hirano
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Journal Title
Paleobiology
Volume: 41
Pages: 108-121
DOI
Peer Reviewed
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