2015 Fiscal Year Research-status Report
キャビティーリングダウンを用いた新規ラジカル分子錯体の分光検出
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26410019
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
須磨 航介 鹿児島大学, 法文教育学域教育学系, 准教授 (10506728)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | CDRS / 高分解能分光 / ラジカル / ラジカル錯体 / 分子軌道計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は主にラジカル分子錯体H2O-CNの理論およびCRDS実験による研究を行った。以下にそれぞれ概略を説明する。 まず、前者ではab initio計算によりH2O-CN錯体の電子基底状態における分子間ポテンシャル曲面に関する理論研究をおこなった。基底状態の最安定構造はこれまで報告していたC2v構造ではなく、水素原子1個を除くすべての原子がほぼ同一面内にある環状構造をとることが分かった。反転と錯体内の水分子の水素原子の交換に対するポテンシャル曲面の障壁は小さく、振動準位はトンネル効果で4つに分裂すると考えられる。電子励起状態ではこうした運動にどのような変化が現れるか、現在研究を進めている。 次にCRDSによる実験研究について説明する。CNラジカルのA-X(3,0)遷移から短波長の領域にH2O-CNによるものと考えられるブロードな遷移が観測された。しかし、レーザーの分解能が十分でなかったため、回転構造まで分解できず、スペクトルキャリアの特定には至らなかった。また、新規の高分解能色素レーザーを導入した。昨年度まで使用していたレーザーの分解能はDGO使用時でも分解能は0.07cm-1程度しか出ていなかったのに対し、新規レーザーの分解能は約0.025cm-1程度で、複雑なスペクトルパターンを示す分子種や回転定数の小さい錯体のスペクトル探査に効果を発揮することが期待される。現在導入したレーザーを用いて先述のH2O-CN錯体のものと考えられる遷移の同定を試みている。また、昨年度に引き続きAr-CN錯体の探査を行ったが、検出には至っていない。希ガス錯体は水錯体に比べ結合エネルギーが小さく、生成量が少ないためCRDSによる探査は難しいのかもしれない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初研究計画になかったレーザー装置の導入等があったため、スペクトル探査等実験研究は若干遅れた。期待される実験結果と組み合わせて理論研究を行う予定であったが、実験結果があまり得られなかったため、理論研究については独立して行わざるをえなかったが、水CN錯体の電子基底状態における興味深い運動が明らかになるなど一定の成果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度早期に新規導入の高分解能レーザーに関連する物品、装置を揃え、スペクトル探査に着手したい。高分解能レーザーを導入したことで、複雑なスペクトルが予想される錯体の探査について当初計画より大幅な前進が期待できる。まずはH2O-CN錯体の同定を行い、その他の錯体についても探査を行う。装置の感度の問題で錯体の探査が難しいようであれば、ラジカルの探査も積極的に行いたい。
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Causes of Carryover |
旧レーザーを使用した研究の遂行に当初予定したより時間を要したため、新規の高分解能レーザーの導入が遅れた。このため、新規レーザーに関係する予算を次年度に繰り越さざるを得なかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
新規導入の高分解能レーザーに関する物品を調達する。必要であれば当該レーザーの技術者に依頼し、装置の調整等を行う。
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