2014 Fiscal Year Research-status Report
ケイ素置換基により活性化された不飽和分子の新規変換手法の開発
Project/Area Number |
26410119
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岡本 和紘 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30552658)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 有機ケイ素化合物 / ルイス酸触媒 / 環化付加反応 / 立体選択的合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究においては,これまでその性質が研究されていなかったケイ素置換基を導入した電子不足オレフィンの特異な性質を解明することにより,軌道相互作用に基づく真に有用な有機ケイ素化合物の変換手法の確立を目指している.平成26年度は大学院生2名の協力を得て,カルボカチオンを活性中間体とする選択的環化付加反応の開発に取り組んだ.結果として,スカンジウムやインジウムの触媒を用いることにより,穏和な条件下でのアリルシランとβ-シリルエノンとの位置および立体選択的[3+2]環化付加反応,ならびにアリルシランとβ-シリルアルキノンとの[2+2]環化付加反応を開発した.前者に関しては速報として一流化学誌であるAngewandte Chemieへの採録を達成した.後者に関しても既に必要な化合物の同定・分析を終えており,論文誌への投稿準備中である.これらの反応において発生するカチオン中間体においては,ともに二つのケイ素置換基からの超共役安定化効果,βおよびγケイ素効果を受けており,ゆえに従来の手法では見られなかった選択性が発現したものと考えられる.今回得られた[3+2]環化付加体は続く酸化反応によって二つのケイ素置換基を個別に酸化することが可能であり,複数の酸素官能基による立体中心を有するプロスタグランジン類の不斉合成への応用を念頭に置いた変換反応の開発にも成功している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
既に一つの課題について十分な成果を上げ,論文誌に掲載されていること,ならびにもう一つの課題もほぼ当初目標を達成していること.このことから当初一年で達成可能であるとしていた範囲を十分に超えている.
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定より順調に計画が進行しているため,今年度はイオン的な軌道相互作用に基づくケイ素化合物の変換手法の開発に区切りをつけ,関連するデータをまとめて論文誌へ投稿する準備を行う.一方.ラジカルを経由する反応は触媒が不要である,反応効率が極めて高い,などの利点から環境付加を極力抑えた理想的な有機合成反応であると言えるが,ラジカル中間体の制御は一般に困難であるため合成反応の種類は限られている.そこでイオン的な相互作用で得られた知見をもとに,本年度はラジカル中間体を発生させる変換手法の新規開発に取り組む.
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