2015 Fiscal Year Research-status Report
三次元デジタル電気泳動に基づく生体内タンパク質解析
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26410159
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
末吉 健志 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70552660)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | デジタル電気泳動 / ミクロスケール電気泳動 / ゲル電気泳動 / 等電点電気泳動 / アフィニティ電気泳動 / タンパク質分析 / オンライン試料濃縮 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体内タンパク質解析において、ウエスタンブロッティングは必須の分析法であるが、長い分析時間、低い再現性・検出感度、煩雑な実験操作、多量の試料・試薬を要することなどが問題視されている。本研究では、これらの問題点を一斉に解決するための新規分析法として、pH緩衝ゲル・分子ふるいゲル・免疫捕捉ゲルを積層したゲルを多次元分離場として用いる『三次元デジタル電気泳動分析法』を開発してきた。 平成27年度は、異種機能性ゲルの段階的重合による積層ゲル調製法を応用して二次元積層平板ゲルを作製し、試作電気泳動デバイスを用いた二次元デジタル電気泳動法の開発を行った。まず、フォトマスクとマスクアライナーを用いた段階的な光重合によって、pH緩衝ゲルと分子ふるいゲルが二次元積層された平板ゲルを作製した。続いて、作製した二次元積層平板ゲルを用いた二次元デジタル電気泳動を行うための電気泳動用デバイスを、ポリメチルメタクリレート製基板およびポリジメチルシロキサンを用いて試作した。開発した二次元積層平板ゲルと試作デバイスを用いて、2種類のモデルタンパク質の等電点と分子サイズに基づく二次元デジタル電気泳動分析を行った結果、それぞれ異なるpH緩衝ゲル界面および分子ふるい界面に濃縮および分離される様子が観察された。 一方、ブロッティング後の免疫検出に変わるマルチ免疫捕捉・検出を行うためのデジタルブロッティングゲルについて、抗原抗体反応を利用した選択的捕捉ゲルの開発と、その積層化に取り組んだ。その結果として、異なるモデルタンパク質を異なる界面で捕捉可能なデジタルブロッティングゲルの調製が達成された。 以上の結果から、提案した二次元デジタル電気泳動の実現可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目標であった二次元積層平板ゲルおよび二次元電気泳動用試作デバイスの作製とその基礎評価が達成された。また、ゲル濃度および組成の詳細な検討によって、多層化にともなう分離能向上が十分に可能であることを裏付けるデータが得られた。併せて、タンパク質の免疫検出のためのゲルの多層化も十分に可能であることが示された。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの検討から、二次元デジタル電気泳動分析の実現とその多層化による分離能向上が十分に可能であることが確認された。その一方で、多層化にともない積層ゲル自体の調製の手間が大幅に増加するのは避けられない事実であるが、多次元化にともないその問題がより顕著に顕在化した。そのため、単純な三次元積層構造体の調製は将来的な汎用化への展開を考えても非常に困難であると判断し、デジタル電気泳動分析の三次元化に関して方法論の転換を行うこととした。 多層化にともなうデバイス作製の煩雑さを解消するための新たなアイデアとして、機能性ヒドロゲル充填キャピラリーのカートリッジ化を着想した。本アイデアにおいては、予め機能性ヒドロゲルが充填された長いキャピラリーを多数調製しておき、これを必要に応じて切断することで、ヒドロゲルが充填された短いキャピラリーカートリッジを作製する。これを任意に選択・接続することで、任意の診断に必要な分離機能が集積化された「多段階デジタル電気泳動分析」が可能となる。既にキャピラリーカートリッジの開発と接続、そして作製したデバイスを用いた一次元デジタル電気泳動分析が可能であることを確認しており、これまでの概念における多次元化に対応する「複数の分離原理に基づく多段階デジタル電気泳動分析」を行うことは十分に可能であることが示唆されている。 平成28年度には、これまでに知見を積み重ねてきたデジタル電気泳動の様々なモードについてカートリッジ化してそれぞれを接続することで、複数の分離モードに基づくデジタル電気泳動を連続的に行うことができるデバイスを開発し、生体試料分析への応用を行う。
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