2015 Fiscal Year Research-status Report
膜蛋白質の機能分子としての利用を指向した新規ゲル化手法の開発とナノ材料創成
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26410177
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
水野 稔久 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90345950)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 膜蛋白質 / 可溶化試薬 / 生体直行反応 / ナノ構造化 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度既に開発に成功している、アルキン基を持つ化学反応性膜蛋白質可溶化試薬Alk-C3-DKDKC12Kを用いた膜蛋白質ゲル化の条件に関して、更に詳細な検討を進めた。その結果、室温での反応条件でありながら混合後数秒で膜蛋白質溶液全体をゲル化できることを見出した。アジド基とアルキン基の間のHuisgen環化付加の反応効率は85%以上と確認され、ビスアジド化PEGとAlk-C3-DKDKC12Kの間の迅速な架橋反応が、膜蛋白質の高速ゲル化の要因であると確認された。この得られたゲル内部での膜蛋白質の変性度合いを、シアノバクテリアのチラコイド膜に存在する膜蛋白質光化学系I(PSI)を用い評価を行ったが、膜タンパク質PSIに変性は見られなかった。 また、化学反応性膜蛋白質可溶化試薬のみを用いる方法以外の、膜蛋白質ナノ(あるいはマイクロ)構造化に向けた検討も行った。具体的には、他の合成高分子により作製されるナノ構造体内部に内包する方法を選択し、ナノ構造体としては架橋性高分子を前駆体高分子とした不織布を検討した。種々の水溶性の架橋性高分子を新たに開発し検討を行った結果、膜蛋白質の変性を抑えながら不織布が作製可能な新たな水溶性の架橋性高分子の開発に成功した。次年度はこちらを用いた、膜蛋白質ナノ(あるいはマイクロ)構造化も検討していきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年度目以降の研究目標として「膜蛋白質ゲルからのナノ構造体の作製」、「ナノ構造体内に閉じ込められた膜蛋白質の機能評価」、「膜蛋白質を用いたデバイス作製に関する新手法の検討」を掲げていたが、今年度は主に前半2つに関して取り組んだ。前年度既に開発に成功している、アルキン基を持つ化学反応性膜蛋白質可溶化試薬Alk-C3-DKDKC12Kを用いた膜蛋白質ゲル化の条件に関して、更に詳細な検討を進めた結果、室温での反応条件でありながら混合後数秒で膜蛋白質溶液全体を高速ゲル化出来る条件を見い出した。一方でこの得られたゲル内部での膜蛋白質の変性度合いの評価を行ったが、膜タンパク質PSIに変性は見られなかった。Alk-C3-DKDKC12Kを用いた膜蛋白質ゲル化の反応条件を最適化することで、室温での高速ゲル化の条件を見出したため、ガラス基板表面での膜蛋白質の薄膜化を検討した。Alk-C3-DKDKC12Kを含むバッファー溶液中に分散された膜蛋白質を、架橋剤であるビスアジド化PEG(分子量2 kDa)と混合後、隙かさずガラス基板表面にキャストし薄膜化した。均一な厚みの膜蛋白質フィルムの作製が確認されたため、薄膜ゲル化された膜蛋白質に対して種々の分光法を用い機能評価を行ったが、薄膜化された膜蛋白質機能に変性は見られなかった。 一方で、化学反応性膜蛋白質可溶化試薬のみを用いる方法以外の、膜蛋白質ナノ(あるいはマイクロ)構造化に向けた検討も行い、膜蛋白質の変性を抑えながら不織布が作製可能な新たな水溶性の架橋性高分子の開発に成功した。初期データとして、膜蛋白質の代わりに水溶性蛋白質である緑色蛍光蛋白質(GFP)の内包固定化をし、その機能評価を行ったがGFPに変性は見られていない。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、反応性膜蛋白質可溶化試薬Alk-C3-DKDKC12Kを用いた膜蛋白質ゲル化の条件の最適化を行うことで、混合後わずか数秒で膜蛋白質溶液全体を高速ゲル化できる手法を見出した。この結果は、今後インクジェットタイプの3Dプリンターと組み合わせることで、様々な膜蛋白質マイクロ構造化ゲルを作製できることを示唆しており検討していきたい。 また、ナノ構造化の初段階としてガラス基板表面での膜蛋白質の薄膜化を検討し、膜蛋白質の機能を保持した薄膜化に成功した。しかし一方で、薄膜化することで膜蛋白質ゲルの溶媒への溶解速度の顕著な上昇が見られた。これは、ゲルの体積あたりの表面積の上昇に起因し、架橋度合いがまだ不十分であることを示唆した。この問題は、膜蛋白質を他の形態のナノ(あるいはマイクロ)構造に成形した際にも問題となることが予想され、次年度は、より反応性の高い化学反応性膜蛋白質可溶化試薬を開発し、この問題を解決する予定である。 化学反応性膜蛋白質可溶化試薬のみを用いる方法以外の、膜蛋白質ナノ(あるいはマイクロ)構造化に向けた検討も行い、膜蛋白質の変性を抑えながら不織布が作製可能な新たな水溶性の架橋性高分子の開発に成功した。次年度においては、この不織布のナノファイバー内部に膜蛋白質を固定化した不織布フィルムの作製を行い、固定化された膜蛋白質の機能評価を行っていきたい。 さらに最終段階として、これらの試薬開発を通した「膜蛋白質を用いたデバイス作製に関する新手法の検討」にも取り組んでいく。
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Causes of Carryover |
初年度からの研究目標である膜蛋白質のナノ(あるいはマイクロ)構造化を目指した反応性膜蛋白質可溶化試薬の開発に関して、ある一定の目処がついてきたものの、ナノ(あるいはマイクロ)構造体の水溶媒中での安定性の向上が必要であることが、実際に膜蛋白質のナノ(あるいはマイクロ)構造体を作成していく段階で明らかとなってきた。従って、更なる試薬の改良が必要となるため、様々な膜蛋白質のナノ構造化への着手が若干遅れてきている。その関係で2年度目の予算の使用が遅延してきており、次年度への予算の繰越をお願いしたい。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
膜蛋白質のナノ(あるいはマイクロ)構造体の水溶媒中での安定性向上を可能とする反応性膜蛋白質可溶化試薬の更なる開発と、そちらを用いた様々な膜蛋白質のナノ(あるいはマイクロ)構造体の作製に、繰り越した予算を使用したい。
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[Journal Article] Light-induced hydrogen production by Photosystem I–Pt nanoparticle conjugates immobilized in porous glass plate nanopores2016
Author(s)
T. Noji, T. Suzuki, M. Kondo, T. Jin, K. Kawakami, T. Mizuno, H. Oh-oka, M. Ikeuchi, M. Nango, Y. Amao, N. Kamiya, T. Dewa
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Journal Title
Res. Chem. Intermed.
Volume: 00
Pages: 00-00
Peer Reviewed
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