2014 Fiscal Year Research-status Report
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26410198
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
関根 嘉香 東海大学, 理学部, 教授 (50328100)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | PM2.5 / 光触媒 / 無害化 / 空気汚染 |
Outline of Annual Research Achievements |
微小粒子状物質(PM2.5)に含まれる酸化還元活性物質(キノン類等)は、生体細胞内で活性酸素の生成を促し、この活性酸素による酸化ストレスが、呼吸器疾患や心疾患等の健康障害を引き起こすと考えられている。本研究の目的は、光触媒によってPM2.5に含まれる酸化還元活性物質を分解し、無害化する技術を確立することである。 はじめに、PM2.5の酸化還元活性測定法としてジチオトレイトール(DTT)法を検討した。PM2.5中の酸化還元活性物質は、DTTから酸素への電子伝達を触媒し、活性酸素の生成を促進する。DTTの消費速度は触媒活性に比例するので、残留DTTを比色分析法で測定すればPM2.5の触媒能を知ることができる。そこで、神奈川県平塚市の室内・屋外にてハイボリウム・エアーサンプラーを用いて石英繊維製フィルター上にPM2.5を捕集し、超純水で抽出後、DTT法を適用した。その結果、PM2.5の水抽出物は有意にDTTを消費し、室内試料よりも屋外試料の方が活性酸素の生成能が高いことがわかった。 次に、光触媒として酸化チタン、酸化亜鉛および酸化ジルコニウムを担持した石英繊維製フィルターを作成した。光触媒の担持量はPM2.5の分解能力に関連するが、担持量の増加はフィルターの圧力損失を増加させ、エアーサンプラーに過剰の負荷を与える。そこで、作成したフィルターの圧力損失およびメチレンブルー法に基づく光触媒活性を測定し、各光触媒に対して最適な担持量を決定した。作成した光触媒担持フィルターをハイボリウム・エアーサンプラーに装着し、屋外のPM2.5を捕集した。捕集後の試料に紫外線を照射したところ、PM2.5の重量減少および二酸化炭素の生成が認められ、酸化チタンに最も高い活性が見いだした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の研究を構成する要素技術は、PM2.5の有害性評価と光触媒担持フィルターの作成である。 有害性評価技術についてはDTT法を適用し、超純水による抽出条件、反応条件等を検討した。検討の過程で①石英繊維製フィルターの不純物の影響、②繰り返し再現性が低い等の問題が発生した。①に関してはフィルターの超純水によるプレ洗浄によりブランクの活性を抑制でき、また②関しては試薬類の光に対する安定性を考慮して、暗室にて実験操作を行うことにより、繰り返し再現性を高めることができた。以上の検討から、PM2.5の酸化還元活性測定法のプロトコールを確立した。 一方、光触媒として酸化チタン、酸化亜鉛および酸化ジルコニウムを担持した石英繊維製フィルターを作製した。光触媒の担持量は、圧力損失およびメチレンブルー法による光触媒活性を考慮してそれぞれ最適化した。次に屋外大気中のPM2.5を捕集し、PM2.5の分解活性を材料間で比較した。PM2.5分解活性の指標として、二酸化炭素生成量、色調変化、電子顕微鏡による観察像を用いた。その結果、PM2.5の分解能は酸化チタン>酸化亜鉛=酸化ジルコニウムとなった。そこで酸化チタン担持フィルターを用いて紫外線照射条件と分解活性の関係を検討した。尚、このPM2.5の分解能は、メチレンブルー法による光触媒活性の評価結果と相関せず、その原因については詳細検討することにした。 以上のことから、平成26年度は計画通り研究を進めることができ、新たな知見も得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
①光触媒活性評価法の検討:PM2.5は捕集場所や時間によって質・量ともに変化する。材料レベルでの分解活性を知るためには、PM2.5の代替となる物質を用いた標準的な評価法が必要である。メチレンブルー法は光触媒活性の評価法として広く利用されているが、平成26年度の検討においてその評価結果はPM2.5の分解能とは相関しなかった。この理由を検討すると同時に、代替物質を用いた標準評価法を確立する。 ②光触媒担持石英繊維製フィルターによるPM2.5無害化実証試験:作成した光触媒担持フィルターを用いてPM2.5の無害化を実証する。光触媒担持フィルター上に屋外および屋内空気中のPM2.5を捕集する。捕集した試料の画分に紫外線を照射し、照射有無による酸化還元活性の変化をDTT法により測定し、無害化の程度を評価する。あわせてPM2.5濃度との相関性も検討する。試料の採取は、神奈川県平塚市に所在する東海大学湘南校舎にて定期的かつ長期的に実施する。また東京渋谷区に所在する東海大学付属望星高等学校にも協力を依頼し、地点間比較を行う。 ③光触媒による無害化メカニズムの検討:PM2.5の酸化ストレス誘導能は、キノン類などの有機化合物、遷移金属イオンによるものと推定される。光触媒は紫外線照射下、有機化合物の酸化分解、およびいくつかの遷移金属イオンの光析出に寄与すると考えられる。そこで、紫外線照射に伴う二酸化炭素生成量および遷移金属イオン濃度の変化を調べ、酸化還元活性の変化量との関連を明らかにし、無害化メカニズムを考察する。
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Causes of Carryover |
中国北京市で開催された国際会議ICEEN2014における成果発表が招待講演となり、学内資金より旅費が補助されたため、平成26年度は海外旅費を使用しなかった。またPM2.5試料の採取を東海大学内のみで行ったため、研究協力者への試料捕集謝金が発生しなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度は当初の研究計画を遂行し、かつ海外での成果発表および論文発表を積極的に行って予算を有効に使用する。
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Research Products
(7 results)